講演情報
[P-015]多職種で支える心不全患者の治療経験
○馬場 めぐみ1、室田 弘二1、松原 利江子1、橋本 みゆき2、寺尾 導子2 (1. 医療法人臨生会 名寄歯科医院、2. 医療法人臨生会 吉田歯科分院)
【緒言・目的】
心不全とは心機能障害を基本とする病態であるが,合併症を含む非心臓要因が病態に与える影響は大きく,運動療法とともに食事療法が重要である。栄養障害は心不全発症のリスクとなり,心不全発症後は病態悪化が栄養障害を増悪させるだけでなく,栄養障害の進行が心不全の重篤化を促進するという,負のスパイラルが起きると考えられている。
今回われわれは,歯科訪問診療での介入から多職種連携により,食形態や摂取量が改善した 1 例を経験したので報告する。
【症例および経過】
71歳、男性。うっ血性心不全,非持続性心室頻拍,糖尿病(インスリン使用),腎不全,脳梗塞,高血圧症,運動性失語の既往あり。2024年〇月,心不全増悪ならびに低血糖のため,かかりつけの病院に救急搬送された。治療を受けるも症状が改善されないため,市内基幹病院循環器内科へ転院となった。急性心筋梗塞契機の心原性ショック,心不全・腎不全増悪と診断され,冠動脈ステント留置術が施行された。術後,リハビリテーションなどに対する意欲の低下や,管理栄養士・言語聴覚士が介入していたにもかかわらず,食欲不振の状態であった。義歯を持っているが使用しないため,主治医から歯科訪問診療の依頼があった。
口腔内所見は動揺が大きく保存困難な歯を認め,義歯は不適合な状態であった。言語理解はあるが構音障害を認め,発語失行であった。歯周病治療と並行して抜歯と義歯修理,口腔機能訓練を治療計画とした。参加した病院カンファレンスでは,言語聴覚士から舌の表出訓練が実施されていたので,口腔機能訓練にも取り入れた。患者は徐々に指導を受け入れ,口腔機能訓練に取り組むようになった。入院時は嚥下食であったが,管理栄養士と随時連携して治療を行い,全粥+柔菜食(キザミとろみ付き)から常食+常菜(一口大カット)へ改善し,摂取量も充足したので栄養補助食品は休止となった。担当医からは心不全患者に対する療養指導を行う上で,栄養管理の観点からも口腔機能が重要であると多職種へ提言された。
なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
疾患を持つ高齢患者に対し,病態に対応した口腔衛生や口腔機能管理指導が必要であった。また,多職種と連携することが重要であり,そのためには歯科衛生士も更なる医学的知識の蓄積が重要であると考えられた。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)
心不全とは心機能障害を基本とする病態であるが,合併症を含む非心臓要因が病態に与える影響は大きく,運動療法とともに食事療法が重要である。栄養障害は心不全発症のリスクとなり,心不全発症後は病態悪化が栄養障害を増悪させるだけでなく,栄養障害の進行が心不全の重篤化を促進するという,負のスパイラルが起きると考えられている。
今回われわれは,歯科訪問診療での介入から多職種連携により,食形態や摂取量が改善した 1 例を経験したので報告する。
【症例および経過】
71歳、男性。うっ血性心不全,非持続性心室頻拍,糖尿病(インスリン使用),腎不全,脳梗塞,高血圧症,運動性失語の既往あり。2024年〇月,心不全増悪ならびに低血糖のため,かかりつけの病院に救急搬送された。治療を受けるも症状が改善されないため,市内基幹病院循環器内科へ転院となった。急性心筋梗塞契機の心原性ショック,心不全・腎不全増悪と診断され,冠動脈ステント留置術が施行された。術後,リハビリテーションなどに対する意欲の低下や,管理栄養士・言語聴覚士が介入していたにもかかわらず,食欲不振の状態であった。義歯を持っているが使用しないため,主治医から歯科訪問診療の依頼があった。
口腔内所見は動揺が大きく保存困難な歯を認め,義歯は不適合な状態であった。言語理解はあるが構音障害を認め,発語失行であった。歯周病治療と並行して抜歯と義歯修理,口腔機能訓練を治療計画とした。参加した病院カンファレンスでは,言語聴覚士から舌の表出訓練が実施されていたので,口腔機能訓練にも取り入れた。患者は徐々に指導を受け入れ,口腔機能訓練に取り組むようになった。入院時は嚥下食であったが,管理栄養士と随時連携して治療を行い,全粥+柔菜食(キザミとろみ付き)から常食+常菜(一口大カット)へ改善し,摂取量も充足したので栄養補助食品は休止となった。担当医からは心不全患者に対する療養指導を行う上で,栄養管理の観点からも口腔機能が重要であると多職種へ提言された。
なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
疾患を持つ高齢患者に対し,病態に対応した口腔衛生や口腔機能管理指導が必要であった。また,多職種と連携することが重要であり,そのためには歯科衛生士も更なる医学的知識の蓄積が重要であると考えられた。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)