講演情報
[P-017]食べることを地域で支える訪問嚥下診療の取り組み
○岡田 和隆1、松下 貴惠1、小林 國彦2 (1. 医療法人渓仁会 定山渓病院 歯科診療部、2. 北海道医療大学病院)
【目的】
社会の高齢化に伴い、医療機関への通院が困難である高齢者が増えている。このような背景から国は在宅医療の充実を目指しており、その一環として歯科訪問診療を推進している。しかしながら歯科訪問診療を実施する歯科医療機関は全体の約3割程度であり、提供体制が不十分である。一方で生活期・慢性期において摂食嚥下障害を抱える高齢者も増えており、生活の場での対応が求められるようになっている。このようなニーズの高まりから、当院では2024年5月から歯科医師と言語聴覚士(以下、ST)との協働で摂食嚥下障害に特化した診療を開始した。そこで本研究はわれわれの診療の取り組みを紹介し、症例も交えて摂食嚥下障害における在宅・施設でのニーズを明らかにすることを目的とする。
【方法】
2024年5月から12月までの間に訪問嚥下診療を受けた患者を対象とし、診療録を用い後方視的に調査した。年齢、性別、基礎疾患、誤嚥性肺炎の既往、居住形態、依頼元、栄養摂取状況、嚥下内視鏡検査(以下、VE)実施の有無、診療後の対応・介入について調査した。なお、診療に至らなかった1名、医療機関からのVE依頼のみの3名は対象から除外した。
【結果と考察】
本研究の対象者は30名(男性9名、女性21名、54〜102歳、中央値87.5歳)であった。多くの対象者が基礎疾患として認知症を有しており、誤嚥性肺炎の既往がある者は10名であった。多くの依頼は施設職員や訪問サービスに関わる職員からであった。経口摂取者は28名であり、そのうち7名が常食を摂取していた。VEを実施したのは13名であった。診察の結果、患者の能力と食形態に齟齬がありレベルダウンした者が4名、レベルアップした者が4名であった。また、水分のとろみについてはレベルダウンが10名、レベルアップが2名であった。姿勢調整を実施したのは21名、摂食方法の指導を実施したのは13名であった。新たにSTによるリハビリテーションを開始したのは17名、歯科治療や口腔衛生管理の介入を始めたのは8名であった。本診療により、経静脈栄養のみだった者が直接訓練可能なレベルとなったり、誤嚥性肺炎を発症し入退院を繰り返していた者が食形態をレベルアップしたまま良好な経過をたどるなど、一定の効果が得られたと考えられる。
(COI開示:なし)
(定山渓病院研究倫理審査 第202426号)
社会の高齢化に伴い、医療機関への通院が困難である高齢者が増えている。このような背景から国は在宅医療の充実を目指しており、その一環として歯科訪問診療を推進している。しかしながら歯科訪問診療を実施する歯科医療機関は全体の約3割程度であり、提供体制が不十分である。一方で生活期・慢性期において摂食嚥下障害を抱える高齢者も増えており、生活の場での対応が求められるようになっている。このようなニーズの高まりから、当院では2024年5月から歯科医師と言語聴覚士(以下、ST)との協働で摂食嚥下障害に特化した診療を開始した。そこで本研究はわれわれの診療の取り組みを紹介し、症例も交えて摂食嚥下障害における在宅・施設でのニーズを明らかにすることを目的とする。
【方法】
2024年5月から12月までの間に訪問嚥下診療を受けた患者を対象とし、診療録を用い後方視的に調査した。年齢、性別、基礎疾患、誤嚥性肺炎の既往、居住形態、依頼元、栄養摂取状況、嚥下内視鏡検査(以下、VE)実施の有無、診療後の対応・介入について調査した。なお、診療に至らなかった1名、医療機関からのVE依頼のみの3名は対象から除外した。
【結果と考察】
本研究の対象者は30名(男性9名、女性21名、54〜102歳、中央値87.5歳)であった。多くの対象者が基礎疾患として認知症を有しており、誤嚥性肺炎の既往がある者は10名であった。多くの依頼は施設職員や訪問サービスに関わる職員からであった。経口摂取者は28名であり、そのうち7名が常食を摂取していた。VEを実施したのは13名であった。診察の結果、患者の能力と食形態に齟齬がありレベルダウンした者が4名、レベルアップした者が4名であった。また、水分のとろみについてはレベルダウンが10名、レベルアップが2名であった。姿勢調整を実施したのは21名、摂食方法の指導を実施したのは13名であった。新たにSTによるリハビリテーションを開始したのは17名、歯科治療や口腔衛生管理の介入を始めたのは8名であった。本診療により、経静脈栄養のみだった者が直接訓練可能なレベルとなったり、誤嚥性肺炎を発症し入退院を繰り返していた者が食形態をレベルアップしたまま良好な経過をたどるなど、一定の効果が得られたと考えられる。
(COI開示:なし)
(定山渓病院研究倫理審査 第202426号)