講演情報
[P-025]顎下部蜂窩織炎を発症した摂食嚥下障害の在宅患者に対し学内総合病院との連携で迅速に対応しえた一症例
○三浦 慶奈1、石郷岡 友美2、関川 翔一3,4、赤堀 元彦5、大久保 真衣1,5、杉山 哲也1,5、大神 浩一郎6、野村 武史3,7、石田 瞭5、片倉 朗3,8,9 (1. 東京歯科大学千葉歯科医療センター摂食嚥下リハビリテーション科、2. 東京歯科大学千葉歯科医療センター歯科衛生士部、3. 東京歯科大学口腔がんセンター、4. 東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座、5. 東京歯科大学口腔健康科学講座摂食嚥下リハビリテーション研究室、6. 東京歯科大学千葉歯科医療センター総合診療科、7. 東京歯科大学口腔腫瘍外科学講座、8. 東京歯科大学千葉歯科医療センター口腔外科、9. 東京歯科大学口腔病態外科学講座)
【緒言・目的】
顎口腔領域の蜂窩織炎は気道閉塞のリスクがあり,特に意思疎通困難な在宅患者には適切で迅速な対応が求められる。今回,在宅訪問患者が顎下部蜂窩織炎を発症したが,本学総合病院との連携により訪問から搬送まで4時間以内とスムーズな対応ができたケースを経験したので報告する。
【症例および経過】
76歳男性。くも膜下出血,高血圧が既往にある。2022年8月に脳梗塞,右片麻痺,偽性球麻痺を発症した。経口摂取困難であり同年11月に胃瘻造設を行い,回復期病院に転院後,2023年3月に自宅退院となった。4月に経口摂取を希望して歯科訪問診療の依頼があり,嚥下内視鏡検査を実施した。多量の分泌物が貯留しており,嚥下反射惹起が困難であった。よって,重度摂食嚥下障害と診断し,誤嚥性肺炎等の予防ため週1回の間接訓練と口腔衛生管理を開始した。また,多数歯に4mm以上の歯周ポケットがあり,右下7番は7㎜で動揺度1であったため,歯周基本治療も開始した。病状は安定していたが,2024年6月の朝,訪問看護師が右側頬部の腫脹を発見し,訪問担当医師に相談後,当科に連絡があった。右下7番が原因歯と想定し,同日の夕方に急患対応で訪問したところ,右側頬部から顎下にかけて広範囲の腫脹と発赤,右下7番からの排膿を認めた。症状から歯性感染に伴う顎下部蜂窩織炎を疑い,地域提携病院に受け入れを要請したが受け入れ困難との回答であった。そこで,本学総合病院歯科・口腔外科に受け入れ要請を行い,緊急搬送後,気道評価の後に静注抗菌薬投与が開始された。翌日には局所麻酔下で口腔内より切開排膿処置およびドレーン留置が行われ,7日後に原因歯抜去,10日後には経過良好につき自宅退院となった。退院7日後には抜糸および口腔衛生管理を再開し,現在も経過良好で週1回の訪問診療を継続している。
なお,本報告の発表について患者本人からの同意が得られないため,代諾者から文書による同意を得ている。
【考察】
今回は他職種や本学総合病院との連携により,生命に危機が及ぶ可能性がある顎下部蜂窩織炎患者に対して迅速な対応が可能となった。
当センターは入院設備がないため,今後も同様のケースが予測される。よってスマートフォンの導入を開始しており,今後は情報をリアルタイムで共有できるシステム導入にも注力していく。
(COI 開示:なし)(倫理審査対象外)
顎口腔領域の蜂窩織炎は気道閉塞のリスクがあり,特に意思疎通困難な在宅患者には適切で迅速な対応が求められる。今回,在宅訪問患者が顎下部蜂窩織炎を発症したが,本学総合病院との連携により訪問から搬送まで4時間以内とスムーズな対応ができたケースを経験したので報告する。
【症例および経過】
76歳男性。くも膜下出血,高血圧が既往にある。2022年8月に脳梗塞,右片麻痺,偽性球麻痺を発症した。経口摂取困難であり同年11月に胃瘻造設を行い,回復期病院に転院後,2023年3月に自宅退院となった。4月に経口摂取を希望して歯科訪問診療の依頼があり,嚥下内視鏡検査を実施した。多量の分泌物が貯留しており,嚥下反射惹起が困難であった。よって,重度摂食嚥下障害と診断し,誤嚥性肺炎等の予防ため週1回の間接訓練と口腔衛生管理を開始した。また,多数歯に4mm以上の歯周ポケットがあり,右下7番は7㎜で動揺度1であったため,歯周基本治療も開始した。病状は安定していたが,2024年6月の朝,訪問看護師が右側頬部の腫脹を発見し,訪問担当医師に相談後,当科に連絡があった。右下7番が原因歯と想定し,同日の夕方に急患対応で訪問したところ,右側頬部から顎下にかけて広範囲の腫脹と発赤,右下7番からの排膿を認めた。症状から歯性感染に伴う顎下部蜂窩織炎を疑い,地域提携病院に受け入れを要請したが受け入れ困難との回答であった。そこで,本学総合病院歯科・口腔外科に受け入れ要請を行い,緊急搬送後,気道評価の後に静注抗菌薬投与が開始された。翌日には局所麻酔下で口腔内より切開排膿処置およびドレーン留置が行われ,7日後に原因歯抜去,10日後には経過良好につき自宅退院となった。退院7日後には抜糸および口腔衛生管理を再開し,現在も経過良好で週1回の訪問診療を継続している。
なお,本報告の発表について患者本人からの同意が得られないため,代諾者から文書による同意を得ている。
【考察】
今回は他職種や本学総合病院との連携により,生命に危機が及ぶ可能性がある顎下部蜂窩織炎患者に対して迅速な対応が可能となった。
当センターは入院設備がないため,今後も同様のケースが予測される。よってスマートフォンの導入を開始しており,今後は情報をリアルタイムで共有できるシステム導入にも注力していく。
(COI 開示:なし)(倫理審査対象外)