講演情報
[P-027]鹿児島医療センターにおける高齢者の経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)に対する周術期口腔機能管理
○中村 康典1、大河内 孝子1、福永 莉々亜1、下田平 佳純1、吉村 卓也2、手塚 征宏2、池田 菜緒3、宮田 春香3、西 恭宏3 (1. 独立行政法人国立病院機構鹿児島医療センター歯科口腔外科、2. 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科顎顔面機能再建学講座口腔顎顔面外科学分野、3. 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科顎顔面機能再建学講座口腔顎顔面補綴学分野)
【目的】外科的人工弁置換術は侵襲が大きく高齢者や合併症を有する患者では手術が適応できないこともある。経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)は開胸をすることなく人工弁を留置する低侵襲の新しい治療法で本邦では2013年に導入され、当院では2017年6月に導入された。開胸する大動脈弁置換術と同様に当初から当科では周術期口腔機能管理を行ってきた。今回、周術期口腔機能管理の効果を評価する目的で検討を行った。【方法】対象は2022年6月から2023年6月までに当科に周術期口腔機能管理を依頼され研究の同意を得られた有歯顎、65歳以上の高齢心臓弁膜症患者でTAVIを施行した62例(男性27例、女性35例、平均年齢83.1歳)。術前検査時に当科へ紹介された対象患者に対して周術期口腔機能管理の介入を行った。口腔内診査、評価後に口腔衛生管理を実施し、必要に応じて歯科治療も実施した。初診時から手術入院期間を通じて、周術期口腔機能管理を実施し、術前、術後も口腔内評価を行い、口腔衛生状況および、術後の発熱および肺炎の有無等について検討を行った。【結果と考察】対象患者の58例(93.5%)が後期高齢者であった。初診時の口腔内評価では、平均残存歯数は17.8本で19本以下は35例(48.3%)で、歯周ポケット4㎜以上平均保有歯数は2.9本であった。PCRの平均は初診時77.7%で術前は74.4%、術後は66.0%であった。口腔衛生状態概評では不良、著しく不良の患者が初診時40.3%、術前は33.8%、術後は20.0%で、舌苔は1/3以上付着は初診時35.4%、術前32.2%、術後29.1%であった。術前の口腔水分計の評価では平均が29.0で、38.2%の患者が27未満であった。また、2日以上発熱の患者は10例(16.1%)、術後肺炎は0例であった。初診時の口腔衛生状態不良患者は約4割存在したが介入により術前には改善し術後も維持され、術後肺炎の発症は無く術後合併症の予防に一定の効果を認めた。今後有歯顎高齢者の増加が予想されるなか、高齢者の術後合併症軽減に周術期口腔機能管理は重要な医療管理の一つと考えられた。また、高齢者では口腔機能低下症予防を考慮した管理も課題として考えられた。(COI開示:なし)(国立病院機構鹿児島医療センター倫理審査委員会承認番号 2021-7)