講演情報
[P-035]経カテーテル心臓手術前日に行った動揺歯の抜歯後に2回の再出血が起きた症例
○久野 彰子1、服部 馨1、髙澤 理奈1、細入 枝里1、髙村 友莉1、山﨑 菜々子1 (1. 日本医科大学付属病院 口腔科)
【緒言・目的】
カテーテルを用いた心臓手術は,従来の開胸手術に比べて患者の身体的負担が少ないため,高齢者に適応されることが増えている。今回,経カテーテル心臓手術前の周術期口腔機能管理として,脱落の危険がある動揺歯を抜歯し止血確認したにも関わらず,その後術前と術後の2回にわたり再出血が起きた症例について検討を行ったので報告する。
【症例および経過】
85歳男性。大動脈弁狭窄症,心筋梗塞,脳梗塞,高血圧,慢性腎不全,糖尿病の既往あり。大動脈弁狭窄症に対し,全身麻酔下で大腿動脈アプローチによる経カテーテル大動脈弁置換術を行う予定となり,手術前日,麻酔科診察後に口腔科を16時ごろ受診。右上の側切歯と犬歯の残根が動揺Ⅲ度であり,脱落の危険があったため抜歯を行った。この時点で抗凝固薬のエドキサバン(Ⓡリクシアナ)の服用があったため,抜歯窩に酸化セルロースを充填,2針縫合し,圧迫後止血を確認した。また,上顎にはその他の動揺歯に対し,手術時の歯の保護のためにマウスピースを作製した。抜歯の約1.5時間後に患者の病室に往診し,抜歯部位を確認したところ再出血を認めたため,再度圧迫止血し,手術時用のマウスピースを止血用として装着しながら就寝するように伝えた。翌日の午前9時に抜歯部位が止血されていることを確認し,その後手術となった。手術は10時から12時まで行われ,患者は術後ICUに入室したが,16時に抜歯部位より再出血ありと看護師から連絡があった。すぐにICUに行ったところ,マウスピース内で抜歯窩から出血していることが確認できた。浸潤麻酔下で抜歯窩を再掻爬し,酸化セルロースを充填後6針縫合し,さらにガーゼを抜歯窩に当ててマウスピースを装着することにより止血を得ることができた。
なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
本症例は経カテーテル手術であったため,抗凝固薬は手術の前日まで継続されていた。また,術後の抗凝固療法として,即効性のあるヘパリンが2回にわたり静脈内投与されていた。術前の抜歯は侵襲の少ないものであり,止血にも注意して処置したつもりであったが,縫合などが不十分であった可能性がある。手術前に動揺歯を抜歯する場合,術後の抗凝固療法にも注意し,止血処置をより厳密に行う必要があると考えられた。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)
カテーテルを用いた心臓手術は,従来の開胸手術に比べて患者の身体的負担が少ないため,高齢者に適応されることが増えている。今回,経カテーテル心臓手術前の周術期口腔機能管理として,脱落の危険がある動揺歯を抜歯し止血確認したにも関わらず,その後術前と術後の2回にわたり再出血が起きた症例について検討を行ったので報告する。
【症例および経過】
85歳男性。大動脈弁狭窄症,心筋梗塞,脳梗塞,高血圧,慢性腎不全,糖尿病の既往あり。大動脈弁狭窄症に対し,全身麻酔下で大腿動脈アプローチによる経カテーテル大動脈弁置換術を行う予定となり,手術前日,麻酔科診察後に口腔科を16時ごろ受診。右上の側切歯と犬歯の残根が動揺Ⅲ度であり,脱落の危険があったため抜歯を行った。この時点で抗凝固薬のエドキサバン(Ⓡリクシアナ)の服用があったため,抜歯窩に酸化セルロースを充填,2針縫合し,圧迫後止血を確認した。また,上顎にはその他の動揺歯に対し,手術時の歯の保護のためにマウスピースを作製した。抜歯の約1.5時間後に患者の病室に往診し,抜歯部位を確認したところ再出血を認めたため,再度圧迫止血し,手術時用のマウスピースを止血用として装着しながら就寝するように伝えた。翌日の午前9時に抜歯部位が止血されていることを確認し,その後手術となった。手術は10時から12時まで行われ,患者は術後ICUに入室したが,16時に抜歯部位より再出血ありと看護師から連絡があった。すぐにICUに行ったところ,マウスピース内で抜歯窩から出血していることが確認できた。浸潤麻酔下で抜歯窩を再掻爬し,酸化セルロースを充填後6針縫合し,さらにガーゼを抜歯窩に当ててマウスピースを装着することにより止血を得ることができた。
なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
本症例は経カテーテル手術であったため,抗凝固薬は手術の前日まで継続されていた。また,術後の抗凝固療法として,即効性のあるヘパリンが2回にわたり静脈内投与されていた。術前の抜歯は侵襲の少ないものであり,止血にも注意して処置したつもりであったが,縫合などが不十分であった可能性がある。手術前に動揺歯を抜歯する場合,術後の抗凝固療法にも注意し,止血処置をより厳密に行う必要があると考えられた。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)