講演情報

[P-037]唾液中口腔細菌叢およびタンパクを標的とした認知機能低下スクリーニング法の検討

○出分 菜々衣1、小山 尚人1,2、大谷 有希1,2、加藤 慎也1,2、中村 卓1、尾﨑 友輝1、吉成 伸夫1,2 (1. 松本歯科大学歯科保存学講座(歯周)、2. 松本歯科大学大学院歯学独立研究科健康増進口腔科学講座口腔健康分析学)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【目的】
 近年,元気で歯科医院に通院される高齢者が増加している.本研究では,自立高齢者の認知機能低下と口腔機能,歯周病との関連について明らかにする.さらに,口腔細菌叢および口腔細菌産生タンパクを標的とした認知機能低下をスクリーニングする方法を検討することを目的とした.
【方法】
 対象者は全身疾患に罹患していない高齢者で,全身因子の影響を可及的になくした状態で認知機能と口腔内の状態の関連を分析した.すなわち,60歳以上の自立高齢者23名(男性14名,女性9名)を対象とし,除外基準は,現在歯数20歯未満,認知症および歯周病と関連する全身既往歴を認める者とした.安静時唾液からの口腔細菌叢解析は16S rRNA遺伝子部分塩基配列を標的としたアンプリコンシーケンス解析および予測メタゲノム解析を実施した.
【結果と考察】
 認知機能低下群(N=11,平均年齢 81.1±7.6歳)は正常群(N=12,平均年齢 76.1±7.3歳)と比較し,現在歯数が少なく,プロービング時の出血の割合が高く,口腔機能(特に口唇,舌)の巧緻性および速度の低下を認めた(すべてP<0.05).口腔細菌叢解析の結果,マイナーな細菌が均等に存在する確率が高く,歯周病関連細菌であるTannerella属が検出された(P<0.05).また,口腔細菌の産生タンパクであるCytochrome C Oxidase Copper Chaperone COX11およびSoluble cytochrome b562が,認知機能低下群において正常群よりも有意に割合が低下していた(P<0.05).よって,認知機能低下群では歯周病関連細菌やミトコンドリア機能変化による神経変性関連タンパクの存在が示唆された.(COI 開示:なし)(松本歯科大学 倫理審査委員会承認番号 0301)