講演情報
[P-041]訪問診療においてフルアーチティースを用いた積層造形義歯を応用した無歯顎症例
○小林 嵩史1、竜 正大1、上田 貴之1 (1. 東京歯科大学老年歯科補綴学講座)
【緒言・目的】
訪問診療において,通法による総義歯製作は,時間を要することに加えて診療環境や時間の制限,患者背景から困難な場合があり,より簡便かつ患者負担が少ない総義歯製作が要求される。近年,CAD/CAM技術の応用により,従来法に比べ短時間で患者負担が少ない総義歯製作が可能となってきた。
今回我々は,訪問診療の患者に対し,CAD/CAM技術を応用した総義歯製作法に,14本の歯が連結され咬合接触状態が確立された既製人工歯を用いることで,効率的かつ良好な結果を得た無歯顎症例を経験したので報告する。
【症例および経過】
患者は89歳の女性で,認知症および大腿骨頭骨折による歩行困難のため,有料老人ホームに入居していた。5年前に装着した上下顎総義歯を使用中だが,咀嚼時痛を訴え,咬合接触状態不良,上下顎床粘膜面の適合不良を認めた。短期間での義歯製作を目的に,使用中の義歯をスキャンして製作した複製義歯を用いて,連結された既製人工歯を用いた上下顎積層造形総義歯を製作することとした。
まず義歯をモデルスキャナ(D2000, 3shape)にてスキャンし,同形態の複製義歯を歯科用積層造形機(IMD-S, 松風)にて製作した。複製義歯を用いて咬合採得と上下顎の咬合圧印象を行ったのち,採得した印象と顎間関係をスキャンし,CADソフトウエア上で人工歯排列と歯肉形成を行った。試適用義歯を造形し試適した結果は良好であったため,上下顎義歯床を造形した。造形した義歯床に人工歯(ベラシアSAフルアーチティース,松風)を設置し,バキュームシーラー(S-WAVEバキュームシーラー,松風)で真空化することで歪の発生を抑止して本重合を行った。人工歯を接着後,仕上げ研磨を行い装着した。
装着時の義歯の維持,安定は良好であり,咬合調整量もごく少量であった。現在装着7か月が経過しているが,経過および患者満足度は良好である。
【考察】
本症例では,咬合接触状態が確立されているフルアーチティースを使用したことで,装着時の咬合調整量をごく少量にすることができた。咬合調整は患者の協力が不可欠であるが,認知症患者など協力が得られにくい状況下でも利用しやすく,調整時間も短縮できたため,訪問診療での総義歯製作に有効であることが示唆された。(COI開示:株式会社松風)(東京歯科大学倫理審査委員会承認番号1009)
訪問診療において,通法による総義歯製作は,時間を要することに加えて診療環境や時間の制限,患者背景から困難な場合があり,より簡便かつ患者負担が少ない総義歯製作が要求される。近年,CAD/CAM技術の応用により,従来法に比べ短時間で患者負担が少ない総義歯製作が可能となってきた。
今回我々は,訪問診療の患者に対し,CAD/CAM技術を応用した総義歯製作法に,14本の歯が連結され咬合接触状態が確立された既製人工歯を用いることで,効率的かつ良好な結果を得た無歯顎症例を経験したので報告する。
【症例および経過】
患者は89歳の女性で,認知症および大腿骨頭骨折による歩行困難のため,有料老人ホームに入居していた。5年前に装着した上下顎総義歯を使用中だが,咀嚼時痛を訴え,咬合接触状態不良,上下顎床粘膜面の適合不良を認めた。短期間での義歯製作を目的に,使用中の義歯をスキャンして製作した複製義歯を用いて,連結された既製人工歯を用いた上下顎積層造形総義歯を製作することとした。
まず義歯をモデルスキャナ(D2000, 3shape)にてスキャンし,同形態の複製義歯を歯科用積層造形機(IMD-S, 松風)にて製作した。複製義歯を用いて咬合採得と上下顎の咬合圧印象を行ったのち,採得した印象と顎間関係をスキャンし,CADソフトウエア上で人工歯排列と歯肉形成を行った。試適用義歯を造形し試適した結果は良好であったため,上下顎義歯床を造形した。造形した義歯床に人工歯(ベラシアSAフルアーチティース,松風)を設置し,バキュームシーラー(S-WAVEバキュームシーラー,松風)で真空化することで歪の発生を抑止して本重合を行った。人工歯を接着後,仕上げ研磨を行い装着した。
装着時の義歯の維持,安定は良好であり,咬合調整量もごく少量であった。現在装着7か月が経過しているが,経過および患者満足度は良好である。
【考察】
本症例では,咬合接触状態が確立されているフルアーチティースを使用したことで,装着時の咬合調整量をごく少量にすることができた。咬合調整は患者の協力が不可欠であるが,認知症患者など協力が得られにくい状況下でも利用しやすく,調整時間も短縮できたため,訪問診療での総義歯製作に有効であることが示唆された。(COI開示:株式会社松風)(東京歯科大学倫理審査委員会承認番号1009)