講演情報
[P-049]がん終末期高齢者に歯科訪問診療を通じてエンドオブライフ・ケアに関わった1症例
○末永 智美1、金本 路1、植木 沢美1、吉野 夕香2、飯田 貴俊1,3、會田 英紀4、山田 律子5 (1. 北海道医療大学在宅歯科診療所、2. 北海道医療大学病院 医療相談・地域連携室、3. 北海道医療大学歯学部 生体機能・病態学系 摂食機能療法学分野、4. 北海道医療大学歯学部 生体機能・病態学系 高齢者・有病者歯科学分野、5. 北海道医療大学看護福祉学部 看護学科 老年看護学分野)
【緒言・目的】
がん終末期では病状の進行や治療に伴い口腔に問題が生じることがあり,歯科介入は口腔の不快症状の緩和や経口摂取支援,良好なコミュニケーションの維持など,患者のQOL維持に大きく貢献すると考える。令和6年度介護報酬改定でがん終末期患者への居宅療養管理指導の算定回数が6回に引き上げられたばかりで,在宅でのがん終末期患者への歯科介入の報告は多くはない。今回,在宅のがん終末期高齢者に歯科訪問診療でエンドオブライフ・ケアに関わった症例を経験したので報告する。
【症例および経過】
82歳女性,要介護2,独居。胆管癌から全身転移し抗がん剤治療中。X年Y月歯肉の腫れを主訴にケアマネジャーの依頼で歯科訪問診療開始。初診時下顎右側臼歯部に歯肉腫脹を認め,歯周病の消炎処置後に,継続した口腔健康管理の必要性について提案,同意のもと居宅療養管理指導(歯科医師・歯科衛生士)を開始した。X年(Y+3)月,抗がん剤の中止に伴い医師の訪問診療が開始された。粘膜炎や口腔カンジダ症の発症もあり,関係職種には連絡ノートとICTツールで情報共有した。本情報を受け訪問診療医や訪問看護師は口腔ケアの重要性を指導し,本人・家族とチームの信頼関係が構築された。本人は,積極的治療の中止や,黄疸の出現,食欲低下などの全身状態の変化に不安を抱えていたが,関係職種間で今後の病状変化の見通しや本人・家族の想いを共有し,歯科チームも気持ちに寄り添った支援を行った。症例は,X年(Y+10)月,在宅で吐血し救急搬送にて緩和ケア病棟入院後,同日死去した。家族から,口腔衛生を保ち最期まで食事できたことや不安への支えになったと後日連絡を受けた。本研究は倫理的配慮の説明を行い文書にて本人と家族の同意を得た。
【考察】
本症例では歯肉の腫脹を主訴とした治療目的での訪問依頼であったが,高齢者本人や家族,関係職種の理解も得て,歯科の継続的介入が可能となった。粘膜炎や口腔カンジダ症の早期対応,口腔衛生を保持し誤嚥性肺炎の発症なく最期まで食事ができたことは,QOL維持に貢献できたと考える。がん終末期における口腔健康管理の有用性を他職種に啓発するとともに,連携方法の確立が重要である。また歯科医療従事者は,疾病特性を理解し心理的支援を十分考慮するためにも多職種との情報共有に努め,連携の強化が必要不可欠である。(COI 開示:なし)(倫理審査対象外)
がん終末期では病状の進行や治療に伴い口腔に問題が生じることがあり,歯科介入は口腔の不快症状の緩和や経口摂取支援,良好なコミュニケーションの維持など,患者のQOL維持に大きく貢献すると考える。令和6年度介護報酬改定でがん終末期患者への居宅療養管理指導の算定回数が6回に引き上げられたばかりで,在宅でのがん終末期患者への歯科介入の報告は多くはない。今回,在宅のがん終末期高齢者に歯科訪問診療でエンドオブライフ・ケアに関わった症例を経験したので報告する。
【症例および経過】
82歳女性,要介護2,独居。胆管癌から全身転移し抗がん剤治療中。X年Y月歯肉の腫れを主訴にケアマネジャーの依頼で歯科訪問診療開始。初診時下顎右側臼歯部に歯肉腫脹を認め,歯周病の消炎処置後に,継続した口腔健康管理の必要性について提案,同意のもと居宅療養管理指導(歯科医師・歯科衛生士)を開始した。X年(Y+3)月,抗がん剤の中止に伴い医師の訪問診療が開始された。粘膜炎や口腔カンジダ症の発症もあり,関係職種には連絡ノートとICTツールで情報共有した。本情報を受け訪問診療医や訪問看護師は口腔ケアの重要性を指導し,本人・家族とチームの信頼関係が構築された。本人は,積極的治療の中止や,黄疸の出現,食欲低下などの全身状態の変化に不安を抱えていたが,関係職種間で今後の病状変化の見通しや本人・家族の想いを共有し,歯科チームも気持ちに寄り添った支援を行った。症例は,X年(Y+10)月,在宅で吐血し救急搬送にて緩和ケア病棟入院後,同日死去した。家族から,口腔衛生を保ち最期まで食事できたことや不安への支えになったと後日連絡を受けた。本研究は倫理的配慮の説明を行い文書にて本人と家族の同意を得た。
【考察】
本症例では歯肉の腫脹を主訴とした治療目的での訪問依頼であったが,高齢者本人や家族,関係職種の理解も得て,歯科の継続的介入が可能となった。粘膜炎や口腔カンジダ症の早期対応,口腔衛生を保持し誤嚥性肺炎の発症なく最期まで食事ができたことは,QOL維持に貢献できたと考える。がん終末期における口腔健康管理の有用性を他職種に啓発するとともに,連携方法の確立が重要である。また歯科医療従事者は,疾病特性を理解し心理的支援を十分考慮するためにも多職種との情報共有に努め,連携の強化が必要不可欠である。(COI 開示:なし)(倫理審査対象外)