講演情報
[P-051]炎症性疾患発症から口腔健康管理による食形態の向上に繋げた要介護高齢者の1例
○髙田 正典1、澤田 佳世1、和久井 優香1、渡邊 敏彦2、赤泊 圭太3、水橋 史4、田中 彰5,1 (1. 日本歯科大学 在宅ケア新潟クリニック、2. 上条渡辺歯科医院、3. 赤泊歯科医院、4. 日本歯科大学新潟生命歯学部 歯科補綴学第1講座、5. 日本歯科大学新潟生命歯学部 口腔外科学講座)
【緒言・目的】
訪問歯科診療において炎症性疾患等の対応は苦慮することが多い。今回,要介護高齢者に対し炎症性疾患発症から口腔健康管理による食形態の向上に繋げた1例を経験したので報告する。
【症例および経過】
93歳,女性。クモ膜下出血(右半身麻痺),高血圧症,骨粗鬆症,右上腕骨折の既往あり。要介護度3,ADL低下により歩行困難。20XX年4月,かかりつけ歯科医院より下顎歯肉の出血,歯の動揺を主訴に紹介された。初診時の口腔内所見は,かかりつけ歯科医の対応により,顔面の腫脹などの急性炎症は改善傾向にあった。右側下顎第二小臼歯と第一大臼歯の残根は,動揺度3を認めた。周囲歯肉発赤と腫脹が著しく,複数の瘻孔形成と持続的排膿を認めた。瘻孔部からプローブを挿入し,骨を触知可能であった。画像所見では,歯槽硬線ならびに歯根膜腔は確認できず,歯槽骨吸収による浮遊状を呈していた。透過像周囲骨は不透過性亢進し,骨硬化を認めた。臨床所見として,右側下顎第二小臼歯と第一大臼歯に起因する下顎骨骨膜炎(下顎骨骨髄炎・薬剤関連顎骨壊死等の疑い)と診断した。脳外科ならびに整形外科主治医へ対診した。対診結果として,BPやDmab製剤による治療歴はなく,血管新生阻害薬,免疫調整薬との併用歴も確認できなかった。さらに顎骨病変や放射線照射歴も無い事などからMRONJは否定された。当初は,消炎療法継続下に入院加療を計画した。しかしながら,ご家族,施設職員から外来通院や入院等による生活環境変化を不安視する意見が多く,訪問歯科診療下に口腔衛生管理と局所洗浄から開始した。看護師,介護士,栄養管理士等と連携・協働することで低栄養防止に努めた。当院による口腔衛生管理と局所洗浄によって持続的排膿は終息し,腐骨形成を認めた。術前の画像所見では,骨透過性領域内に不透過性領域が混在し,骨形成と考えらる所見から順調な治癒過程にあるが示唆された。その後,抜歯術を行い,下顎義歯新製による咬合再建により、最終的に食形態の向上に繋げることができた。
【考察】
当初,入院下に下顎骨骨膜炎に準じた加療計画を立案したが,施設や家族の要望により訪問歯科診療下での加療開始となった。診療の際も多職種による協力体制や疾患に対する理解や指導を協働できた事が一連の加療から食形態の向上に繋がったと考えられる。
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)
訪問歯科診療において炎症性疾患等の対応は苦慮することが多い。今回,要介護高齢者に対し炎症性疾患発症から口腔健康管理による食形態の向上に繋げた1例を経験したので報告する。
【症例および経過】
93歳,女性。クモ膜下出血(右半身麻痺),高血圧症,骨粗鬆症,右上腕骨折の既往あり。要介護度3,ADL低下により歩行困難。20XX年4月,かかりつけ歯科医院より下顎歯肉の出血,歯の動揺を主訴に紹介された。初診時の口腔内所見は,かかりつけ歯科医の対応により,顔面の腫脹などの急性炎症は改善傾向にあった。右側下顎第二小臼歯と第一大臼歯の残根は,動揺度3を認めた。周囲歯肉発赤と腫脹が著しく,複数の瘻孔形成と持続的排膿を認めた。瘻孔部からプローブを挿入し,骨を触知可能であった。画像所見では,歯槽硬線ならびに歯根膜腔は確認できず,歯槽骨吸収による浮遊状を呈していた。透過像周囲骨は不透過性亢進し,骨硬化を認めた。臨床所見として,右側下顎第二小臼歯と第一大臼歯に起因する下顎骨骨膜炎(下顎骨骨髄炎・薬剤関連顎骨壊死等の疑い)と診断した。脳外科ならびに整形外科主治医へ対診した。対診結果として,BPやDmab製剤による治療歴はなく,血管新生阻害薬,免疫調整薬との併用歴も確認できなかった。さらに顎骨病変や放射線照射歴も無い事などからMRONJは否定された。当初は,消炎療法継続下に入院加療を計画した。しかしながら,ご家族,施設職員から外来通院や入院等による生活環境変化を不安視する意見が多く,訪問歯科診療下に口腔衛生管理と局所洗浄から開始した。看護師,介護士,栄養管理士等と連携・協働することで低栄養防止に努めた。当院による口腔衛生管理と局所洗浄によって持続的排膿は終息し,腐骨形成を認めた。術前の画像所見では,骨透過性領域内に不透過性領域が混在し,骨形成と考えらる所見から順調な治癒過程にあるが示唆された。その後,抜歯術を行い,下顎義歯新製による咬合再建により、最終的に食形態の向上に繋げることができた。
【考察】
当初,入院下に下顎骨骨膜炎に準じた加療計画を立案したが,施設や家族の要望により訪問歯科診療下での加療開始となった。診療の際も多職種による協力体制や疾患に対する理解や指導を協働できた事が一連の加療から食形態の向上に繋がったと考えられる。
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)