講演情報

[P-053]誤嚥性肺炎後経口摂取禁止となった患者に対し,経口摂取再開のために地域歯科医院と連携した1例

○大塚 正弥1、伊原 良明1、那小屋 公太1、小俣 孝仁1、高橋 浩二2、大矢 美樹3 (1. 昭和大学 歯学部 口腔健康管理学講座 口腔機能リハビリテーション医学部門、2. 医療法人徳洲会館山病院口腔機能リハビリテーションセンター、3. 医療法人社団 大樹 大崎ThinkPark歯科)
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【緒言・目的】
 誤嚥性肺炎発症により,経口摂取が禁止されていた摂食嚥下障害患者に対して,地域歯科医院との連携・指導により経口摂取再開が可能となった1例を経験したので報告する。
【症例および経過】
 75歳,男性。パーキンソン病(Hoehn&Yahr分類Ⅴ度),認知症,誤嚥性肺炎の既往のため,禁食となり胃瘻による栄養管理中。2024年2月,家族より再び口から食べさせたいという主訴にて当科訪問診療開始。初診時口腔内所見として口腔衛生状態不良と多数歯う蝕を認めたため歯科治療および,口腔ケア介入の必要ありと判断した。また,摂食嚥下機能評価および嚥下内視鏡検査より,舌可動域制限・頸部可動域制限・口唇の筋緊張や声門閉鎖不全・嚥下反射惹起遅延を認め,口腔期・咽頭期障害と診断した。まず,地域歯科医院に歯科治療・口腔ケアに加え,舌ストレッチ・頸部ストレッチ・口唇マッサージなど訓練計画を立案し,実施を依頼した(介入頻度月2回)。また,リクライニング位45度の姿勢調整を実施することで嚥下開始食(0j)の摂取可能と判断し,当科では嚥下内視鏡下での直接訓練を開始した(介入頻度月1回)。直接訓練時の映像を家族と一緒に確認し,試料として使用した食形態が姿勢調整法下で安全に摂取可能であることを共有することで現状の把握,家族での直接訓練の方法,食形態を指示した。介入開始約6ヶ月で嚥下訓練食(1j)が摂取可能となり,地域歯科医院でのう蝕治療も完了し,口腔環境の改善を認めた。介入開始後約12ヶ月で,胃瘻による栄養管理は必要だが,お楽しみ食程度であれば嚥下訓練食(2−1)まで食形態を変更することが可能となった。なお,現在に至るまで誤嚥性肺炎など有害事象は認めていない。本報告の発表について患者家族から文書による同意を得ている。
【考察】
 地域歯科医院と連携を図ることで歯科治療と摂食嚥下指導を並行して行い,短期間に密な介入が可能となった。さらに,定期的な情報共有を行うことで迅速な訓練内容の見直しにつながった。地域歯科医院と専門科を有する大学病院との連携による十分な指導により安全な経口摂取が可能となり,複数の医療機関による独立した対応に比べ地域医療において,より密な対応が実現できると考えられた。

(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)