講演情報
[P-059]口腔機能低下の訴えを契機にParkinson病と診断された症例
○五十嵐 憲太郎1,2、枝広 あや子1,2、金本 成一3、藤井 あゆ1、山崎 亜莉紗1、栗谷川 輝1、林 佐智代4、伊藤 誠康1 (1. 日本大学松戸歯学部有床義歯補綴学講座、2. 東京都健康長寿医療センター研究所、3. 日本大学大学院松戸歯学研究科有床義歯補綴学、4. 日本大学松戸歯学部障害者歯科学講座)
【緒言・目的】
本学付属病院では,2020年より高齢期の口腔機能低下症の検査・管理を目的とした「オーラルフレイル外来」を開設している.一方,口腔機能低下の訴えを主訴で来院する患者には,その原因に加齢のみならず,神経筋疾患等の背景疾患が隠れている場合が散見される.今回,口腔機能低下の訴えをきっかけに神経・筋疾患を疑い,神経内科への精査依頼の結果Parkinson病(PD)と診断された症例を経験したので報告する.本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている.
【症例および経過】
患者は87歳の男性.歯科治療中および食事の際のむせ,薬が飲み込みにくく,会話中に舌がうまくまわらないことを主訴として当院歯周病管理外来より診察依頼があった.高血圧と心筋梗塞以外特記すべき既往歴はなかった.口腔機能検査ではTongue Coating Index:33.3%,口腔水分量:30.0,残存歯数19本,オーラルディアドコキネシス(ODK):/pa/ 2.4回/秒,/ta/ 2.4回/秒,/ta/ 2.8回/秒,舌圧:8.7kPa,グルコース溶出量:142mg/dl,EAT-10:39点で口腔機能低下症と診断され,特に舌口唇運動機能,舌圧,嚥下機能の著しい低下を認めた.また,流涎症状や転倒や外出時の歩行困難などの自訴がみられた.3ヶ月後の再評価時にODKは/pa/ 5.0回/秒,/ta/ 5.6回/秒,/ta/ 5.4回/秒に改善したが,眼瞼下垂症状や左手首に歯車様徴候を認めたため,神経筋疾患の可能性を考え近大学病院神経内科へ精査依頼したところ,PDと診断されL-dopa処方となった.当科でもPDの症状を踏まえた嚥下障害に対する生活指導を行い,3ヶ月ごとの経過観察中であり,小刻み歩行などの症候がみられるが,口腔機能検査結果には大きな変動はない.
【考察】
本症例では,むせや薬剤服用の困難,構音障害などの主訴に加え,口腔機能検査でも舌口唇運動機能,舌圧,嚥下機能の特異的な低下がみられた.また,加齢に伴う機能低下からの逸脱や神経筋疾患が疑われる特徴的な所見から,早期の精査依頼が可能となった.野原らは構音障害や摂食嚥下障害を訴えて来院した患者のほぼすべての症例において原因となる変性疾患があったことを報告しており,口腔機能低下を主訴として来院した患者においても,生活所見や神経筋疾患等に注意を要する可能性が示唆された.
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)
本学付属病院では,2020年より高齢期の口腔機能低下症の検査・管理を目的とした「オーラルフレイル外来」を開設している.一方,口腔機能低下の訴えを主訴で来院する患者には,その原因に加齢のみならず,神経筋疾患等の背景疾患が隠れている場合が散見される.今回,口腔機能低下の訴えをきっかけに神経・筋疾患を疑い,神経内科への精査依頼の結果Parkinson病(PD)と診断された症例を経験したので報告する.本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている.
【症例および経過】
患者は87歳の男性.歯科治療中および食事の際のむせ,薬が飲み込みにくく,会話中に舌がうまくまわらないことを主訴として当院歯周病管理外来より診察依頼があった.高血圧と心筋梗塞以外特記すべき既往歴はなかった.口腔機能検査ではTongue Coating Index:33.3%,口腔水分量:30.0,残存歯数19本,オーラルディアドコキネシス(ODK):/pa/ 2.4回/秒,/ta/ 2.4回/秒,/ta/ 2.8回/秒,舌圧:8.7kPa,グルコース溶出量:142mg/dl,EAT-10:39点で口腔機能低下症と診断され,特に舌口唇運動機能,舌圧,嚥下機能の著しい低下を認めた.また,流涎症状や転倒や外出時の歩行困難などの自訴がみられた.3ヶ月後の再評価時にODKは/pa/ 5.0回/秒,/ta/ 5.6回/秒,/ta/ 5.4回/秒に改善したが,眼瞼下垂症状や左手首に歯車様徴候を認めたため,神経筋疾患の可能性を考え近大学病院神経内科へ精査依頼したところ,PDと診断されL-dopa処方となった.当科でもPDの症状を踏まえた嚥下障害に対する生活指導を行い,3ヶ月ごとの経過観察中であり,小刻み歩行などの症候がみられるが,口腔機能検査結果には大きな変動はない.
【考察】
本症例では,むせや薬剤服用の困難,構音障害などの主訴に加え,口腔機能検査でも舌口唇運動機能,舌圧,嚥下機能の特異的な低下がみられた.また,加齢に伴う機能低下からの逸脱や神経筋疾患が疑われる特徴的な所見から,早期の精査依頼が可能となった.野原らは構音障害や摂食嚥下障害を訴えて来院した患者のほぼすべての症例において原因となる変性疾患があったことを報告しており,口腔機能低下を主訴として来院した患者においても,生活所見や神経筋疾患等に注意を要する可能性が示唆された.
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)