講演情報

[P-067]当科における高齢者の智歯抜歯症例の臨床的検討

○高久 勇一朗1,2、高橋 光1、市ノ澤 将史1、片倉 朗2 (1. 東京都立豊島病院病院歯科口腔外科、2. 東京歯科大学口腔病態外科学講座)
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【目的】
 日本は平均寿命の著しい伸びとともに高齢者人口が増加し,一般の歯科医院を受診する高齢者の割合も経年的に増加傾向と言われている。歯科疾患も歯周疾患の割合が増加しているが,智歯に起因する炎症性の病態により,高齢者の智歯抜歯の機会も増加している。高齢者に対する歯科治療の多くは精神的,肉体的に負荷がかかるため,高齢者の特性に合わせた配慮が必要になるが,抜歯は,高齢者の全身状態に配慮するだけではなく,抜歯自体の難易度も考慮しなければならない。特に智歯の抜歯は,難易度が高く口腔外科の専門医療機関に依頼されることもあるが,簡単に抜歯出来ないことが多く,安全かつ確実に抜歯を行うために,その抜歯方法に関して十分な検討を要する。そこで今回65歳以上の高齢者における智歯抜歯症例について臨床的検討を行ったので報告をする。
【方法】
 対象は2022年4月から2024年12月までの2年9か月の間に東京都立病院機構東京都立豊島病院歯科口腔外科において,65歳以上で智歯の抜歯を行なった症例である。検討項目は症例数,性別,年齢,抜歯部位,智歯の状態,抜歯理由,基礎疾患,常用薬,骨吸収抑制薬の使用,抜歯方法,術後合併症とした。
【結果と考察】
 症例数は88例で,性別は男性50例,女性38例,年齢は65歳から89歳で平均年齢は74歳であった。抜歯部位は下顎がのべ80例,上顎がのべ11例,智歯の状態は骨性埋伏や水平埋伏など埋伏歯が多数を占めた。抜歯理由はう蝕や智歯周囲炎を主に炎症性の病態であった。基礎疾患は79例が有し,常用薬は75例であり,そのうち骨吸収抑制薬を使用していたのは3例であった。抜歯方法は通常の局所麻酔に加え外来通院での静脈内鎮静法と入院管理下での静脈内鎮静法および全身麻酔で行っていた。抜歯後1例に顎骨壊死を認めたが,術後合併症は1例もなかった。 必要に応じて静脈内鎮静法や全身麻酔そして入院管理を適応することにより,安全かつ確実な抜歯を行い,高齢者に安心して抜歯をしてもらえるように配慮していた。(COI開示:なし)(東京都立豊島病院 倫理委員会承認番号 倫臨迅6-81)