講演情報

[P-075]介護老人保健施設に口腔ケア介入によって生じたスタッフの口腔衛生意識の変化

○西澤 光弘1,2 (1. 医療法人群栄会田中病院 歯科、2. 医療法人隆仁会 山王歯科)
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【目的】
 超高齢者社会に向け介護老人保健施設や老人ホームなどの需要が高まり入居待ちも散見されるようになった。しかしそれに反して老人施設のスタッフの離職率は高く深刻な人手不足で労働環境は決して良いとは言えない。そのためスタッフはそのような環境でも利用者の口腔衛生管理やQOLの向上に寄与している。当歯科は利用者数約100名が入居する当院介護老人保健施設(認知症専門棟、一般棟、ユニット型)(以降、老健とする)に口腔ケアの介入を行い、老健スタッフにその効果や歯科に対する要望などを調査し課題を検討したので報告する
【方法】
 老健より歯科に口腔ケアでの介入を依頼され、月に2回入居者全員の口腔ケアをおこなった。その約1年後に老健スタッフ自身の意識変化や入所者の行動の変化、日常的口腔ケアでの困難事項などの調査を行い、回答の得られた43名の結果を分析した。
【結果と考察】
 回答者の資格は看護師14名、介護福祉士22名、その他7名(理学療法士、言語聴覚士、生活相談員など)であった。歯科の介入によりスタッフ自身の意識の変化は、「少しは変わった」が最も多く67.4%であった。スタッフから見た入所者の意識や行動の変化は、「全く変わらない」と「一部の方に見られた」が多くそれぞれ51.2%、41.9%となった。現状の口腔ケア(歯科の月2回の介入とスタッフによる日常的口腔ケア)で良いかとの質問には「良いとは思わない」がやや多く55.8%であったが、「(現状で)良いと思う」が予想以上に多かったことに驚いた。日常的口腔ケアで困難な事象を問う質問では、「拒否する方の口腔ケア」が突出して多く日常の口腔ケアの困難さが想像された。次いで「口臭の除去、予防」「全身状態の悪い方の口腔ケア」「口腔内の状態の悪い方の口腔ケア」などとなった。現状で良いとは思わない方が今後どのようにするのが良いかとの質問では、「歯科に大いに介入してもらう」「歯科に相談する体制を確立する」が多い結果となった。今回の調査の結果からより効果的な口腔ケアを提供するためには利用者の口腔内や全身状態に合わせた対応が必要であり、そのためには歯科と老健スタッフの密な連携と老健スタッフ自身や利用者への口腔衛生に対する意識の向上が必要であると考えている。
(COI 開示:なし)
(医療法人群栄会田中病院 倫理委員会承認番号20241201)