講演情報
[P-079]骨修飾薬投薬患者における抜歯後治癒経過の調査
○秀島 樹1,2、福島 あかり1、磯部 昌幸1、有川 風雅1、中村 ゆり子1、片倉 朗2、潮田 高志1 (1. 東京都立多摩北部医療センター歯科口腔外科、2. 東京歯科大学口腔病態外科学講座)
【目的】ビスフォスフォネート(bisphosphonate:BP)製剤やデノスマブ(denosumab:Dmab)製剤などの骨修飾薬投薬患者に発症する薬剤関連顎骨壊死(medication-related osteonecrosis of the jaw : 以下MRONJ)について研究が進められている。2023年7月には日本口腔外科学会よりポジションペーパー(以下PP)が提示され,術前後の骨修飾薬の休薬について,原則として骨修飾薬を継続下での抜歯を提案している。顎骨の感染、炎症はMRONJ発症の一因であり、抜歯処置は顕在化の契機と考えられている。現状MRONJの発症機序や有効な治療法は確立されておらず,その発症,予防に関する知見は重要であると言える。今回われわれは、抜歯前のMRONJリスクの評価、骨修飾薬の休薬/継続の判断に対する知見を得ることを目的とし,当科で実施した骨修飾薬投薬患者の抜歯症例の予後について後ろ向きに調査,検討を行ったので報告する。【方法】対象は,2023年4月~2024年12月に当科で抜歯術を施行した患者のうち骨修飾薬投薬の既往がある患者について後ろ向き調査を行った。年齢,性別,骨修飾薬投薬の原疾患,骨修飾薬の種類,使用期間,休薬の有無と休薬期間,術前後の抗菌薬投与の有無,抜歯部位,抜歯窩の治癒経過,リスク因子として糖尿病、ステロイドの使用歴、免疫抑制剤の内服歴、化学療法の有無を調査した。統計解析にはEZRを用いた。【結果】症例数133例,平均年齢77.5歳,男女比は1:10であった。骨修飾薬としてはBP製剤が86例,Dmab製剤が37例,その他が10例であり,骨修飾薬投薬の原疾患は骨粗鬆症109例,関節リウマチ8例,自己免疫疾患6例,悪性腫瘍10例であった。治癒不全を認めた症例はいずれもXP上で抜歯対象部の感染や炎症の所見が認められた。リスク因子を有する症例は40例であり,これらに治癒不全を認めた6例がすべて含まれた。術前後の休薬について薬剤別では低用量BP製剤72%(42/58例)、低用量Dmab製剤55%(10/18例)であった。高容量BP、Dmab製剤は3例すべて休薬していたが、治癒不全を認めた。【考察】2023年に新たなポジションペーパーが提示された。今回の調査では、低用量BP製剤においては休薬/継続に有意差はなく、PPで示されている内容を裏打ちする結果となった。その他項目においてもPPに準じた結果となった。今後もガイドライン作成の一助となる様、多くの症例を精査する必要があると考える。
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)