講演情報

[P-085]地域在住高齢者を対象とした栄養・運動・口腔に対する包括的な介入効果の検証

○仲澤 裕次郎1,2、尾関 麻衣子1、宮城 航1、加藤 陽子1,2、山田 裕之1,2、田中 祐子1、水越 新人1、田村 文誉1,2、菊谷 武1,2 (1. 日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック、2. 日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科)
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【目的】
 演者らが行った先行研究において骨格筋量の維持は、リハビリテーションの良好な予後に関連を示し、摂食嚥下障害患者において骨格筋量の維持は重要であることを示した。そこで、本研究は、口腔機能ならびに摂食嚥下機能向上のため、栄養・運動・口腔への包括的介入を行いその効果が認められるかを検討することを目的とした。
【方法】
 地域在住の高齢者にボランティアを集い、研究の同意を得られた13名(男性5名、女性8名、平均年齢76.54±6.14歳)に対し介入調査を行った。初回時に、栄養状態(体重、BMI、SMI、下腿周囲長)・運動機能(握力、歩行速度)・口腔機能(舌圧測定、咬合力、ODK、咀嚼能力)を測定し、集団栄養指導とアミノ酸サプリメントの摂取指導、運動方法(椅子を用いたつま先立ち・立ち座り、壁を用いたプッシング・プリング)の指導、個別の舌圧に対応した舌レジスタンス訓練を指導した。介入効果は、1か月後、2か月後に測定した。解析は、初回時の舌筋力ならびに骨格筋量と各項目との関連と、2か月の介入後の舌筋力で示したリハビリテーション効果と関連する項目を用いて検討した。解析は、SPSS 27 statisticsを用い、有意水準は共に5%未満とした。
【結果と考察】
 初回時の平均舌圧(27.62kPa)は下腿周囲長・ODK(ta音)と、初回時平均SMI(6.33kg/㎡)は体重・下腿周囲長・握力と有意な関連を示した。2か月介入後の平均舌圧(32.46kPa)は、ODK(pa音)と下腿周囲長、SMI(6.47kg/㎡)は握力とそれぞれ有意な関連を示した。2か月間の介入により口腔機能のうち舌圧が平均27.80kPaから32.46kPa、咬合力が平均788.95Nから925.72Nとそれぞれ有意な上昇を認めた。一方、栄養状態・運動機能には変化はなかった。
 今回の介入結果から、従来の舌訓練に加え栄養指導とアミノ酸の効率的な摂取、適度な運動を行うことが、舌圧や咬合力等の口腔機能に対する訓練効果の上昇に繋がる可能性も考えられた。そして、初回時の舌圧・SMIは、下腿周囲長と有意な関連を示し、2か月後の舌圧とSMIも上昇したことから、SMIが口腔機能にも影響を与えることが示唆された。
 今後は要介護者を対象とした研究を行い、口腔を含めた全身機能の低下した高齢者への栄養・運動・口腔の包括的介入の効果を明らかにする予定である。
(COI 開示:なし)
(日本歯科大学 倫理審査委員会承認番号 NDU-T2021-44)