講演情報

[P-087]超音波ブラシを用いた口腔機能トレーニングが高齢者の口腔機能に及ぼす影響

○前田 芙沙1、大神 浩一郎1、大久保 真衣2,3、上田 貴之4、宮本 薫1、江戸野 大河1、橋本 玲央名1、片倉 朗5 (1. 東京歯科大学千葉歯科医療センター総合診療科、2. 東京歯科大学千葉歯科医療センター摂食嚥下リハビリテーション科、3. 東京歯科大学口腔健康科学講座摂食嚥下リハビリテーション研究室、4. 東京歯科大学老年歯科補綴学講座、5. 東京歯科大学口腔病態外科学講座)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【目的】
口腔機能の維持・向上は,健康寿命の延伸において重要である。近年,舌圧や舌口唇運動機能の低下が認知機能の低下と関連することが報告されている。また,会話の困難感が社会参加の減少を招き,そのため認知機能の低下につながる可能性がある。
そこで我々は,舌や頬口唇のトレーニングに特化し,認知機能の低下があっても継続しやすい方法として,舌ブラシを装着した超音波ブラシを用いた短時間かつ低侵襲な方法を開発した。本研究では,超音波ブラシを用いたトレーニングが口腔周囲の筋を活性化するという仮説を立て,その影響を検討することを目的とした。
【方法】
東京歯科大学千葉歯科医療センターにおいて,口腔機能精密検査(口腔衛生状態,口腔湿潤度,咬合力,舌口唇運動機能,舌圧,咀嚼機能,嚥下機能)を実施し,3項目以上が低下に該当し口腔機能低下症と診断された17名(男性7名,女性10名,平均年齢77±8歳)を対象とした。評価項目は,口唇閉鎖力,オーラルディアドコキネシスおよび舌圧測定とした。口唇閉鎖力は,口唇閉鎖力測定器を用いて3回測定しその最大値を用いた。さらに対象者は,超音波ブラシに舌ブラシを装着し,頬・口唇および舌のマッサージを1日3回,4か月間継続して実施した。介入後は,1か月ごとに計4回の再評価を行った。介入前後の比較は,Friedman検定の後,多重比較(Bonferroniの調整)を行った(α=0.05)。
【結果と考察】
口唇閉鎖力は介入前(中央値10.8N)から介入1か月後(中央値12.0N)に向上し,オーラルディアドコキネシス(/pa/)は介入前(中央値6.0回/秒)から介入2ヵ月後(中央値6.4回/秒)に改善が見られた。また,舌圧は介入前(中央値27.0kPa)から介入3ヵ月後(中央値28.0kPa)まで向上し,いずれも介入前に比べて4か月目まで高値を示した。舌は構音運動時に正確で高速かつ連続的な運動が求められるため,舌機能訓練では軽い負荷で速い速度の訓練が必要である。さらに,舌筋の解剖学的特性として,舌前方部の筋繊維は細く,舌根部に向かって筋繊維が太くなる。このため,口輪筋は舌筋に比べて筋肉が薄いため,マッサージ効果が早期に現れ,その後に舌圧の向上が確認されたと考える。今後,軽い負荷で速い速度の訓練を新たに取り入れることで/ta/,/ka/の発音速度がさらに向上する可能性がある。
(COI開示:なし)
(東京歯科大学倫理審査委員会承認番号1113)
(JSPS科研費22K10298)