講演情報
[P-093]急性期病院入院患者の口腔乾燥と経口摂取状態との関連性
○宮島 沙紀1、松尾 浩一郎1,2、日髙 玲奈1,2、水野 留理子1、佐藤 瞳1、石井 萌子1、加藤 夢乃1、吉田 奈永1、田中 美咲1,2、杉田 彩実花1,2、三上 理沙子1,2 (1. 東京科学大学オーラルヘルスセンター、2. 東京科学大学地域・福祉口腔機能管理学分野)
【目的】
急性期では,全身状態の悪化や経口栄養摂取の禁止などにより口腔乾燥が起こりやすい状態にある。本研究は,大学病院入院患者を対象に口腔乾燥と経口摂取の有無,さらに口腔環境との関連性を検証することを目的として実施した。
【方法】
対象は2024年3月から9月に,某大学病院入院患者で当科に診察依頼のあった43名とした。調査項目は年齢,性別,主疾患,口腔湿潤度,口腔環境,血液データ,口腔内写真とした。口腔湿潤度は口腔水分計ムーカスを用いて週に1回測定し,同日に口腔内写真の撮影を実施した。口腔環境はOral Health Assessment Tool(以下,OHAT)で評価を行った。患者の年齢,性別,主疾患,血液データは電子カルテより収集した。初診時の経口摂取の有無で,経口摂取(po)群と非経口摂取(npo)群の2群に群分けした。初回の口腔湿潤度とOHATの関係をSpearmanの順位相関,口腔湿潤度の変化はFriedman検定を用いて分析を行った。
【結果と考察】
対象者の年齢は中央値(四分位)78(69-86)歳で,主疾患は悪性腫瘍が最も多かった。経口摂取群22名,非経口摂取群21名であり,口腔湿潤度は経口摂取群が中央値27.9(26.5-28.65),非経口摂取群が24.9(20.8-28.4)と群間差はなかった。口腔湿潤度とOHATの関連性は,経口摂取群では相関が弱く(r=0.032,P=0.0889),非経口摂取群では強い負の相関が見られた(r=-0.636,P=0.003)。口腔湿潤度の変化は,経口摂取群で数値の推移にはばらつきがあり,非経口摂取群では半数が悪化していたが,両群で統計的な有意な変化は見られなかった。この結果から,入院中の経口摂取が口腔湿潤度に良い影響を与えることが示唆され,口腔の自浄作用を高め、唾液分泌にも影響を及ぼすことが考えられた。一方,非経口摂取患者では,口腔環境が不良な場合ほど,口腔乾燥も進行していることが示唆された。頻回な介入による口腔衛生管理が必要であると考えられた。しかし,短期間での口腔湿潤度の変化に有意差は見られず,口腔湿潤度の改善には早期の経口摂取再開と長期的な口腔衛生管理,および口腔機能管理が重要となる可能性が示された。
(COI 開示:なし)(東京科学大学歯学部倫理審査委員会承認番号 D2023-059)
急性期では,全身状態の悪化や経口栄養摂取の禁止などにより口腔乾燥が起こりやすい状態にある。本研究は,大学病院入院患者を対象に口腔乾燥と経口摂取の有無,さらに口腔環境との関連性を検証することを目的として実施した。
【方法】
対象は2024年3月から9月に,某大学病院入院患者で当科に診察依頼のあった43名とした。調査項目は年齢,性別,主疾患,口腔湿潤度,口腔環境,血液データ,口腔内写真とした。口腔湿潤度は口腔水分計ムーカスを用いて週に1回測定し,同日に口腔内写真の撮影を実施した。口腔環境はOral Health Assessment Tool(以下,OHAT)で評価を行った。患者の年齢,性別,主疾患,血液データは電子カルテより収集した。初診時の経口摂取の有無で,経口摂取(po)群と非経口摂取(npo)群の2群に群分けした。初回の口腔湿潤度とOHATの関係をSpearmanの順位相関,口腔湿潤度の変化はFriedman検定を用いて分析を行った。
【結果と考察】
対象者の年齢は中央値(四分位)78(69-86)歳で,主疾患は悪性腫瘍が最も多かった。経口摂取群22名,非経口摂取群21名であり,口腔湿潤度は経口摂取群が中央値27.9(26.5-28.65),非経口摂取群が24.9(20.8-28.4)と群間差はなかった。口腔湿潤度とOHATの関連性は,経口摂取群では相関が弱く(r=0.032,P=0.0889),非経口摂取群では強い負の相関が見られた(r=-0.636,P=0.003)。口腔湿潤度の変化は,経口摂取群で数値の推移にはばらつきがあり,非経口摂取群では半数が悪化していたが,両群で統計的な有意な変化は見られなかった。この結果から,入院中の経口摂取が口腔湿潤度に良い影響を与えることが示唆され,口腔の自浄作用を高め、唾液分泌にも影響を及ぼすことが考えられた。一方,非経口摂取患者では,口腔環境が不良な場合ほど,口腔乾燥も進行していることが示唆された。頻回な介入による口腔衛生管理が必要であると考えられた。しかし,短期間での口腔湿潤度の変化に有意差は見られず,口腔湿潤度の改善には早期の経口摂取再開と長期的な口腔衛生管理,および口腔機能管理が重要となる可能性が示された。
(COI 開示:なし)(東京科学大学歯学部倫理審査委員会承認番号 D2023-059)