講演情報

[P-006]In vitro細胞老化を遅延させる植物抽出物の網羅的検索

○坂上 宏1、塚原 飛央2、坂東 健二郎2、松田 玲於奈3、小林 真彦3、大西 孝宣3、竹島 浩3、田村 暢章3 (1. 明海大学歯科医学総合研究所(M-RIO)、2. 明海大学歯学部口腔生物再生医工学講座生化学分野、3. 明海大学歯学部病態診断治療学講座高齢者歯科学分野)
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【目的】植物抽出物のin vitro抗老化(アンチエイジング)作用に関する論文のほとんどは、短期的な実験結果によるものであり、長期にわたる抗老化研究は少ない。正常細胞には、テロメラーゼの触媒成分であるテロメラーゼ逆転写酵素が存在しないため、長時間の連続継代後に増殖を停止する。老化マーカーの一つであるコロニー形成能の低下は、コロニーの大きさの不均一性のため、定量化が困難である。そこで、96穴マイクロウェルプレートを用いた代替法を開発し、血清濃度、播種する細胞密度を至適化することにより、2週間の長期培養法を開発し、植物成分の延命効果を網羅的に解析した。 【方法】正常ヒト歯肉線維芽細胞、歯根膜線維芽細胞、歯髄細胞(学内倫理委員会ガイドラインに従い樹立、A0808)。正常肺線維芽細胞、正常皮膚線維芽細胞、ヒト口腔扁平上皮がん細胞、肺がん細胞、膵臓がん細胞(理研セルバンクから購入)は、全て10% FBSと抗生物質を含むDMEM培地に各種植物抽出物を添加して培養した。プレートに1~1,024個の細胞を含む0.06 mLの培養液を撒き、翌日試料を含む培養液0.04 mLを重層し、6日間培養し、栄養素を補充するため新鮮培地0.1 mLを重層した。更に7日間培養後、生細胞数をMTT法(A560)で測定した。4~8群の平均値±SDで表示した。群間の平均の差は一元配置分散分析 (ANOVA) により検定し、Bonferroni法で補正した。細胞老化遅延係数(EI)は、次式で算出した。EI=(サンプル処理細胞の最大A560値/未処理細胞のA560値)x 100 (%).【結果と考察】6種類の正常細胞は、分裂回数(PDL)が増加するにつれ、細胞密度が低下し、40~70PDL付近で分裂が停止した。正常細胞は、がん細胞より血清の要求性が高かった。クマザサ葉アルカリ抽出液、イヌトウキ根抽出液、五葉松松かさ抽出液は、有意に(p<0.05)細胞老化遅延効果を示した(EI=152, 201, 216%)。これらの促進活性は、皮膚細胞で最も顕著に観察され、ポリフェノール類、ホルモン類、低線量放射線(Acraら、第98回日本薬理学会年会)を凌いだ。サンプルの濃度依存性曲線は、全て二相性のホルミシス効果を示した。現在、老化に及ぼす炎症、プロテアソームの影響について検討中である。 (COI 開示:なし)(倫理審査対象外)