講演情報
[P-008]ヒトiPS細胞を用いた副甲状腺分化誘導法の最適化
○木勢 智恵1、中塚 隆介2、佐々木 由香2、川本 章代1、野﨑 中成2、髙橋 一也1 (1. 大阪歯科大学高齢者歯科学講座、2. 大阪歯科大学薬理学講座)
【目的】
骨粗鬆症は高齢者のフレイルの発症要因の一つとなり,歯科医療においてもしばしば問題となる。副甲状腺ホルモン(PTH)製剤は骨粗鬆症に有効であるが,投与法やコストなどの問題がある。また,副甲状腺機能亢進症や低下症については根治的治療法が確立しておらず,生涯にわたる対症療法が必要となっている。これらの疾患に対する治療法の開発には,生理的な副甲状腺細胞の単離培養が重要となるが,ヒト副甲状腺細胞は過形成組織以外では得られず,長期培養も困難である。多能性幹細胞を用いたin vitroでの副甲状腺分化誘導については,副甲状腺様細胞の作成効率が低いことが問題となっており,生理的機能を有する副甲状腺細胞を応用できるには至っていない。本研究では,分化誘導により得られた細胞の遺伝子発現を網羅的に解析することにより,現行の分化誘導法の特性を明らかにすることで分化誘導を最適化する事を目的とした。
【方法】
ヒトiPS細胞を我々が開発した分化誘導法を含む,既報の多能性幹細胞を用いた副甲状腺分化誘導系を参考にして分化誘導を行った。各誘導系のプロトコールに従い2週間の誘導を行い,total RNAを回収した。これらのRNAと胸腺,副甲状腺腺腫由来RNAを用い,次世代シーケンス解析による網羅的比較解析を行った。
【結果と考察】
分化誘導による細胞集団の形態的変化が既報の分化誘導法についても確認され,分化誘導には一定の再現性があることが確認された。次世代シーケンス解析では,副甲状腺や胸腺の分化過程において発現の上昇がみられる遺伝子群がいずれの分化誘導によっても変動していることが確認され,報告された分化誘導法によって,副甲状腺細胞系譜への分化誘導がある程度なされていることが確認された。一方,成熟した副甲状腺で発現しているGCM2およびPTHの発現は確認されなかった。今回,副甲状腺細胞分化誘導における成熟過程の初期段階での遺伝子発現を評価したため,この段階では副甲状腺細胞の成熟化が十分に進んでいないことが示唆された。また今後の課題として,副甲状腺分化誘導おける時間的な調整や成熟化を促進させる因子の同定が必要と考えられた。
(COI 開示:なし)
(関西医科大学 医学倫理審査委員会 2022160(共同研究に係る一括承認)
骨粗鬆症は高齢者のフレイルの発症要因の一つとなり,歯科医療においてもしばしば問題となる。副甲状腺ホルモン(PTH)製剤は骨粗鬆症に有効であるが,投与法やコストなどの問題がある。また,副甲状腺機能亢進症や低下症については根治的治療法が確立しておらず,生涯にわたる対症療法が必要となっている。これらの疾患に対する治療法の開発には,生理的な副甲状腺細胞の単離培養が重要となるが,ヒト副甲状腺細胞は過形成組織以外では得られず,長期培養も困難である。多能性幹細胞を用いたin vitroでの副甲状腺分化誘導については,副甲状腺様細胞の作成効率が低いことが問題となっており,生理的機能を有する副甲状腺細胞を応用できるには至っていない。本研究では,分化誘導により得られた細胞の遺伝子発現を網羅的に解析することにより,現行の分化誘導法の特性を明らかにすることで分化誘導を最適化する事を目的とした。
【方法】
ヒトiPS細胞を我々が開発した分化誘導法を含む,既報の多能性幹細胞を用いた副甲状腺分化誘導系を参考にして分化誘導を行った。各誘導系のプロトコールに従い2週間の誘導を行い,total RNAを回収した。これらのRNAと胸腺,副甲状腺腺腫由来RNAを用い,次世代シーケンス解析による網羅的比較解析を行った。
【結果と考察】
分化誘導による細胞集団の形態的変化が既報の分化誘導法についても確認され,分化誘導には一定の再現性があることが確認された。次世代シーケンス解析では,副甲状腺や胸腺の分化過程において発現の上昇がみられる遺伝子群がいずれの分化誘導によっても変動していることが確認され,報告された分化誘導法によって,副甲状腺細胞系譜への分化誘導がある程度なされていることが確認された。一方,成熟した副甲状腺で発現しているGCM2およびPTHの発現は確認されなかった。今回,副甲状腺細胞分化誘導における成熟過程の初期段階での遺伝子発現を評価したため,この段階では副甲状腺細胞の成熟化が十分に進んでいないことが示唆された。また今後の課題として,副甲状腺分化誘導おける時間的な調整や成熟化を促進させる因子の同定が必要と考えられた。
(COI 開示:なし)
(関西医科大学 医学倫理審査委員会 2022160(共同研究に係る一括承認)