講演情報
[P-020]高齢肺炎患者への急性期における歯科介入と転帰との関連
○大井 孝1,2、菊地 真友3、服部 佳功2、山口 哲史2、田中 恭恵2、猪狩 洋平2、小宮山 貴将2、伊藤 佳彦2、伊藤 有希2、小林 誠一4、矢内 勝4 (1. 石巻赤十字病院 歯科、2. 東北大学大学院歯学研究科加齢歯科学分野、3. 石巻赤十字病院 歯科衛生課、4. 石巻赤十字病院 呼吸器内科)
【目的】介護施設等における高齢者への歯科医療従事者による専門的な介入が,肺炎の一次予防に有効であることは広く知られている。一方で肺炎に罹患した高齢患者に対する歯科介入の肺炎の悪化防止や予後改善への影響を調査した研究はほとんど見られない。そこで本研究では,急性期病院に入院している高齢肺炎患者に対する歯科介入と肺炎の転帰との関連について検討した。【方法】対象は2017年11月から2024年12月までに石巻赤十字病院に入院した65歳以上の肺炎患者のうち,本研究への参加の同意が得られ,かつ石巻赤十字病院からの転院後の転帰まで追跡可能であった1,415名(平均年齢82.5±8.0歳,男性68.8%)とした。患者情報は診療録から抽出した。肺炎の転帰については自宅退院,施設退院,他の医療機関への転院,および死亡退院のいずれかに分類し,さらに自宅退院と施設退院の患者を転帰良好群,他の医療機関への転院と死亡退院の患者を転帰不良群とした。歯科介入の有無と転帰との関連は多重ロジスティック回帰分析を用いた検討を行い,オッズ比(OR)と95%信頼区間(95% CI)を算出した。共変量は年齢階層,性別,肺炎の種類(市中肺炎または医療・介護関連肺炎),肺炎の重症度 (A-DROP score),入院時の血清アルブミン値,入院日数,既往歴・併存疾患(脳血管疾患,心疾患,高血圧,糖尿病,慢性腎臓病,慢性閉塞性肺疾患,認知症)とした。【結果と考察】対象者の入院期間の中央値は15日(四分位区間:10-24),入院中に歯科を受診したのは21.1%(293名)であった。歯科介入の内容は齲蝕治療,歯周疾患治療,抜歯,義歯治療,粘膜疾患への対応など多岐に渡った。患者の転帰を転院先からの転帰を含め集計した結果,自宅退院,施設退院,他の医療機関への転院,死亡退院はそれぞれ56.3%,13.2%,2.3%,28.2%であった。多変量解析の結果,歯科介入の有無と患者転帰は有意に関連し,歯科介入ありの歯科介入なしに対する転帰良好(自宅退院または施設退院)のOR (95% CI)は1.98 (1.40-2.79)であった。本研究より高齢肺炎患者への急性期における歯科介入が良好な転帰に寄与する可能性が示された。(石巻赤十字病院倫理委員会承認番号:17-23)(COI開示なし)