講演情報

[P-028]多職種連携とロジックモデルを基盤とした西和メディケア・フォーラム「口腔衛生・摂食嚥下部会」の活動報告

○小向井 英記1,2,3、今井 裕子2、中嶋 千惠2、東浦 正也1,2、福辻 智1,2、髙橋 一也3 (1. 一般社団法人 奈良県歯科医師会、2. 医療法人 小向井歯科クリニック、3. 大阪歯科大学高齢者歯科学講座)
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【目的】
 高齢化が進む地域社会において、口腔衛生および摂食嚥下障害への対応は、地域包括ケアの重要課題である。特に、患者のQOL向上や医療介護サービスの効率化には多職種連携が欠かせない。しかし、統一された評価方法や連携ルールは未整備である。本部会は、令和5年12月に奈良県歯科医師会が参画する西和メディケア・フォーラム内に新設され、ロジックモデルを基盤に目標達成と多職種連携を促進し、地域における口腔衛生および摂食嚥下支援の充実を目指して活動を開始した。本報告では、部会設立の背景、活動内容、成果および課題を共有する。
【方法】
 本部会はロジックモデルを活用し、「退院支援」「日常の療養支援」「急変時の対応」「看取り」の4分野を対象に、初期アウトカム、中間アウトカム、最終アウトカムを設定。摂食嚥下評価ツール「KTバランスチャート」や口腔評価ツール「歯と口のチェックリスト」を推奨した。さらに、医師、歯科医師、歯科衛生士、言語聴覚士(ST)、管理栄養士、看護師、訪問看護師、行政担当者など多職種が参画し、年4回の委員会議と研修会で情報共有とスキル向上を図った。具体的には、令和6年9月19日に第1回委員会議を開催し、活動目標を明確化。奈良県郡山保健所主催の「在宅歯科口腔保健ツールパック・栄養サマリー説明会」に参加し、研修活動を推進。退院前カンファレンスへの歯科医療職の参加や訪問歯科診療体制の整備を提言した。
【結果と考察】
 多職種連携の成果として、地域包括ケアにおける各専門職の役割分担が明確化され、KTバランスチャートを用いた摂食嚥下評価の標準化が進行した。また、委員会議や研修会を通じて医療・介護職のスキル向上が確認され、広報誌を活用した地域住民への情報提供計画も進行中である。一方で、STの不足や在宅での評価の難しさ、退院後の継続的な口腔ケア支援体制の確立が課題として浮上した。今後、これらの課題への対応が求められる。
 そして、ロジックモデルを基盤とした多職種連携の推進は、口腔衛生および摂食嚥下障害支援に有用であり、統一的な評価手法や情報共有体制の整備が連携の円滑化に寄与することが示唆された。一方で、専門職不足や在宅支援の課題解決には、さらなる人材育成やシステム整備が必要であると考えられた。本活動が地域包括ケアの発展に貢献することを期待する。
(COI 開示:なし)(倫理審査対象外)