講演情報

[P-032]片側下顎骨関節突起骨折に対し非観血的整復術を施行した高齢パーキンソン病患者の1例

○森 美由紀1、齊藤 美香1、大鶴 洋1,2、佐藤 はるか1、武山 桂己1、平野 浩彦1 (1. 東京都健康長寿医療センター歯科口腔外科、2. 大鶴歯科口腔外科クリニック)
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【緒言・目的】 パーキンソン病(以下PD)は、病期の進行により転倒頻度が増加し、転倒を契機に顕著な運動量低下や自立度の低下を引き起こす。今回われわれは、転倒により片側下顎骨関節突起骨折をきたした高齢PD患者において非観血的に加療した1例を経験したので報告する。【症例および経過】 症例:84歳男性。既往歴:PD(Yahr4)、腎機能障害、骨髄異形成症候群。現病歴20XX-1年に他院脳神経内科にてPDと診断された。20XX年X月Y日転倒し、当院に救急搬送された。外傷性クモ膜下出血のため当院脳神経外科に緊急入院、頭部CTで右側下顎骨関節突起骨折が指摘され、当科依頼となった。(第1病日)。初診時全身所見:JCSⅠ-2 姿勢保持困難。口腔外所見:左眼周囲に皮下出血、左結膜下出血、右顎関節部に疼痛、最大開口量27mm。顔面知覚異常なし。口腔内所見:動揺歯や歯の破折なし。下顎の右偏あり。同日施行したCT画像において、右側下顎骨関節突起骨折を認めた。処置および経過:第2病日、PDの管理と社会調整目的に神経内科に転科した。全身麻酔下での観血的整復固定術は耐術不能と判断され、非観血的加療を選択した。第3病日、局所麻酔下に上下顎骨に顎間固定(以下IMF)スクリューを埋入し、第7病日から顎間ゴムによるIMFを行った。不顕性誤嚥リスクが高く、セルフケアが困難であったことから、日勤帯のみIMFを行い、毎日口腔衛生管理の介入を行った。第29病日から誤嚥性肺炎のためABPC/SBTが経静脈的に投与された。第56病日に炎症反応増悪あり、禁食、経鼻胃管挿入となった。IMF継続は困難と判断し、第59病日にIMF終了し、第66病日にIMFスクリューを除去した。咬合状態は初診時と比較し改善がみられた。第71病日、炎症反応は改善し、第73病日に転院した。本報告の発表について代諾者から同意を得ている。【考察】 PD患者における顔面外傷の治療法については、統一した見解がなく、PDの重症度や併存疾患等により、治療方針を慎重に検討する必要がある。さらに、PD患者では自立度の低下による口腔衛生状態の悪化、嚥下機能の低下、運動機能の低下等が出現する可能性も考慮し、IMFの適応や期間に関して、予見性のある治療法を選択することが重要であると考えられた。 COI開示;なし  倫理審査対象外