講演情報
[P-036]統合失調症入院患者の肺炎予防のための口腔健康管理の在り方の検討
○松原 ちあき1,2、今田 良子2、吉澤 彰2,3、山口 浩平2、坂東 誉子4、日下 輝雄4,5,6、古屋 純一2,7、戸原 玄2 (1. 静岡県立大学短期大学部歯科衛生学科、2. 東京科学大学大学院医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野、3. 医療法人社団 亮仁会 那須中央病院、4. 医療法人社団東京愛成会 高月病院、5. 経済産業省大臣官房会計課厚生企画室、6. 東京科学大学大学院医歯学総合研究科 う蝕制御学分野、7. 昭和大学大学院 歯学研究科 口腔機能管理学分野)
【目的】
統合失調症患者では抗精神病薬の副作用から嚥下障害が起こりやすく、誤嚥性肺炎発症のリスクが高い。統合失調症患者では精神症状等の要因から口腔環境が不良になりやすく、積極的な歯科的介入が重要と考えられるが、入院中の統合失調症患者に関する口腔環境や肺炎発症との関連は明らかでない。そこで本研究では、高齢の統合失調症入院患者を対象に口腔環境の実態を調査し、肺炎予防のための効果的な口腔健康管理について検討することを目的とした。
【方法】
対象者は2023年9月にT精神科病院入院中で口腔内評価を実施した113名のうち、データ欠損者を除く65歳以上の65名とした。調査項目は、性、年齢、全身疾患、口腔環境(機能歯数、Oral Health Assessment Tool(OHAT)、Dysphagia Severity Scale(DSS))、身体機能、肺炎の既往歴、服薬状況、在院日数とした。口腔内評価を行った日のすべての調査項目を診療記録から抽出し、口腔環境の実態調査と評価日までの肺炎の既往歴の有無による2群間比較(肺炎既往有群、無群)と、肺炎の既往の関連因子について二項ロジスティック回帰分析を行った。
【結果と考察】
平均年齢は78.7歳、男性33.8%、肺炎の既往歴があったものは53.8%であった。OHAT合計平均点数は7.5点で、歯肉・粘膜、残存歯、義歯、口腔清掃の項目で中央値が「不良」であった。2群間比較では、肺炎既往有群で服薬数が有意に多く、身体機能が低下しているもの多かった(p<0.05)。口腔環境では、肺炎既往有群で機能歯数、嚥下機能を示すDSSが有意に少なかった(p<0.05)。肺炎の既往に関連する因子(オッズ比、95%信頼区間)として、服薬数(1.40、1.10-1.77)と機能歯数(0.91、0.85-0.99)があげられた。以上から、高齢の統合失調症入院患者では、口腔環境が不良であるものが多く、特にう蝕や義歯などの歯科的な専門的介入が必要であることが明らかとなった。肺炎の既往歴があるものは嚥下機能が低下しているものが多く、関連する因子として服薬数や歯数があげられたことから、抗精神病薬の副作用による嚥下障害を考慮した口腔健康管理の実施が肺炎予防では重要となる可能性が示された。(COI開示:なし)(東京科学大学倫理審査委員会承認番号D2020-074)
統合失調症患者では抗精神病薬の副作用から嚥下障害が起こりやすく、誤嚥性肺炎発症のリスクが高い。統合失調症患者では精神症状等の要因から口腔環境が不良になりやすく、積極的な歯科的介入が重要と考えられるが、入院中の統合失調症患者に関する口腔環境や肺炎発症との関連は明らかでない。そこで本研究では、高齢の統合失調症入院患者を対象に口腔環境の実態を調査し、肺炎予防のための効果的な口腔健康管理について検討することを目的とした。
【方法】
対象者は2023年9月にT精神科病院入院中で口腔内評価を実施した113名のうち、データ欠損者を除く65歳以上の65名とした。調査項目は、性、年齢、全身疾患、口腔環境(機能歯数、Oral Health Assessment Tool(OHAT)、Dysphagia Severity Scale(DSS))、身体機能、肺炎の既往歴、服薬状況、在院日数とした。口腔内評価を行った日のすべての調査項目を診療記録から抽出し、口腔環境の実態調査と評価日までの肺炎の既往歴の有無による2群間比較(肺炎既往有群、無群)と、肺炎の既往の関連因子について二項ロジスティック回帰分析を行った。
【結果と考察】
平均年齢は78.7歳、男性33.8%、肺炎の既往歴があったものは53.8%であった。OHAT合計平均点数は7.5点で、歯肉・粘膜、残存歯、義歯、口腔清掃の項目で中央値が「不良」であった。2群間比較では、肺炎既往有群で服薬数が有意に多く、身体機能が低下しているもの多かった(p<0.05)。口腔環境では、肺炎既往有群で機能歯数、嚥下機能を示すDSSが有意に少なかった(p<0.05)。肺炎の既往に関連する因子(オッズ比、95%信頼区間)として、服薬数(1.40、1.10-1.77)と機能歯数(0.91、0.85-0.99)があげられた。以上から、高齢の統合失調症入院患者では、口腔環境が不良であるものが多く、特にう蝕や義歯などの歯科的な専門的介入が必要であることが明らかとなった。肺炎の既往歴があるものは嚥下機能が低下しているものが多く、関連する因子として服薬数や歯数があげられたことから、抗精神病薬の副作用による嚥下障害を考慮した口腔健康管理の実施が肺炎予防では重要となる可能性が示された。(COI開示:なし)(東京科学大学倫理審査委員会承認番号D2020-074)