講演情報
[P-040]摂食嚥下リハビリテーションにより咽頭の骨棘相当部の膨隆が相対的に緩和し経口摂取を確立した1例
○肥後 智行1、森豊 理英子1、中川 量晴1、山口 浩平1、吉見 佳那子1、中澤 貴士1、長澤 祐季1、柳田 陵介1、戸原 玄1 (1. 摂食嚥下リハビリテーション学分野)
【緒言・目的】
頸椎椎体骨棘は重度嚥下障害をもたらし,外科的治療により改善した報告は複数ある。しかしながら,高齢である事から,外科的治療が適応とならない場合もある。本症例では,食道癌に対する化学療法中に,るい瘦と骨棘を伴う重度嚥下障害を認め,経口摂取困難となり胃瘻造設した高齢患者に対し,経口摂取時の姿勢調整等の摂食嚥下リハビリテーションを実施した。患者は,短期的に栄養状態が改善され,胃瘻から離脱し,経口摂取可能となったので報告する。
【症例および経過】
87歳,男性。20XX年3月に胆嚢炎疑いで入院し,食道癌の診断となる。入院中の化学療法中に誤嚥性肺炎を発症後,経口摂取困難となり,胃瘻造設されて禁食となった。退院後,患者本人が経口摂取を強く希望し,6月当科訪問診療を紹介受診。初診時,栄養状態は体重51kg,BMI16.8kg/m²であった。嚥下内視鏡検査(VE)では,左側咽頭後壁の骨棘相当部が膨隆し,舌根沈下も認め,喉頭の視認が困難であった。また,液体の残留及び誤嚥所見を認めた。初診から10日後,姿勢による代償を検討する目的で外来診療を受診し,嚥下造影検査(VF)を実施した。姿勢は中間位で骨棘による液体の咽頭通過不良があったが,左側傾,頸部右回旋とすると,咽頭通過した。以上から,経口摂取は代償法として姿勢を左側傾,頸部右回旋とする事で再開可能であると判断した。その後,定期的に訪問し,経口摂取確立に向け,経口摂取量を段階的に増やした。10月,再度外来を受診し,VFで中間位での液体の咽頭通過を認めたため,代償法の指示を解除した。12月,体重58kg,BMI19.2 kg/m²となり,栄養状態が改善した。VEでは,液体の誤嚥所見を認めず,また咽頭後壁の骨棘相当部の膨隆と舌根沈下が改善され,喉頭の視認が可能となった。最終的に胃瘻から離脱し,1日3食経口摂取へ移行した。なお,本報告の発表について患者本人から同意を得ている。
【考察】
本症例は,るい痩を契機に骨棘による咽頭の通過障害を呈していたが,VE,VFを併用し,姿勢による代償で経口摂取方法を確立する事ができた。その後,経口摂取量を段階的に増やす事で栄養状態が改善され,咽頭腔が広がり,嚥下障害の器質的要因である骨棘の膨隆が相対的に緩和され,咽頭通過障害が改善したと考えられた。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)
頸椎椎体骨棘は重度嚥下障害をもたらし,外科的治療により改善した報告は複数ある。しかしながら,高齢である事から,外科的治療が適応とならない場合もある。本症例では,食道癌に対する化学療法中に,るい瘦と骨棘を伴う重度嚥下障害を認め,経口摂取困難となり胃瘻造設した高齢患者に対し,経口摂取時の姿勢調整等の摂食嚥下リハビリテーションを実施した。患者は,短期的に栄養状態が改善され,胃瘻から離脱し,経口摂取可能となったので報告する。
【症例および経過】
87歳,男性。20XX年3月に胆嚢炎疑いで入院し,食道癌の診断となる。入院中の化学療法中に誤嚥性肺炎を発症後,経口摂取困難となり,胃瘻造設されて禁食となった。退院後,患者本人が経口摂取を強く希望し,6月当科訪問診療を紹介受診。初診時,栄養状態は体重51kg,BMI16.8kg/m²であった。嚥下内視鏡検査(VE)では,左側咽頭後壁の骨棘相当部が膨隆し,舌根沈下も認め,喉頭の視認が困難であった。また,液体の残留及び誤嚥所見を認めた。初診から10日後,姿勢による代償を検討する目的で外来診療を受診し,嚥下造影検査(VF)を実施した。姿勢は中間位で骨棘による液体の咽頭通過不良があったが,左側傾,頸部右回旋とすると,咽頭通過した。以上から,経口摂取は代償法として姿勢を左側傾,頸部右回旋とする事で再開可能であると判断した。その後,定期的に訪問し,経口摂取確立に向け,経口摂取量を段階的に増やした。10月,再度外来を受診し,VFで中間位での液体の咽頭通過を認めたため,代償法の指示を解除した。12月,体重58kg,BMI19.2 kg/m²となり,栄養状態が改善した。VEでは,液体の誤嚥所見を認めず,また咽頭後壁の骨棘相当部の膨隆と舌根沈下が改善され,喉頭の視認が可能となった。最終的に胃瘻から離脱し,1日3食経口摂取へ移行した。なお,本報告の発表について患者本人から同意を得ている。
【考察】
本症例は,るい痩を契機に骨棘による咽頭の通過障害を呈していたが,VE,VFを併用し,姿勢による代償で経口摂取方法を確立する事ができた。その後,経口摂取量を段階的に増やす事で栄養状態が改善され,咽頭腔が広がり,嚥下障害の器質的要因である骨棘の膨隆が相対的に緩和され,咽頭通過障害が改善したと考えられた。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)