講演情報

[P-052]術後麻痺による鼻咽腔閉鎖不全に対して総義歯型軟口蓋挙上装置を適応し鼻咽腔逆流が改善した症例

○藤原 潤1、武市 亜里沙1、新明 史江1、飯田 貴俊2 (1. 医療法人秀友会 札幌秀友会病院、2. 北海道医療大学 生体機能・病態学系 摂食機能療法学)
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【緒言・目的】
 大動脈弁置換術,冠動脈バイバス術後に左反回神経麻痺による左声帯麻痺・軟口蓋挙上不全,高度嚥下障害が生じ,食事中に鼻咽腔逆流が起こり十分な栄養摂取が困難であったが軟口蓋挙上装置(PLP)を作製して逆流を防止し栄養摂取可能となった症例を経験したため,報告する。
【症例および経過】
 76歳男性,X年9月17日腹部ステントグラフト内挿術後9月22日に退院したが,自宅にて胸痛発作あり,9月30日に緊急入院。10月4日大動脈弁置換術(生体弁),冠動脈バイパス術2枝を施行,人工心肺からの離脱ができずECMO使用下で手術は終了。心機能が改善したため10月7日にECMO離脱した。抜管時から嗄声があり,耳鼻科診察で左声帯麻痺と重度な嚥下機能の低下を認め,経管栄養を行っていた。11月1日に当院へリハビリテーション目的で転院し,リハビリテーション科医師からPLPの適応について依頼を受けた。嚥下造影検査(VF)では,右完全側臥位での嚥下中に鼻咽腔逆流を認めた。歯科にて使用中の総義歯にPLP形態を付与した。また義歯の口蓋部分が深く,舌を口蓋に押し当てることができなかったため,舌接触補助床(PAP)形態も付与した。上顎が無歯顎であり総義歯型PLPの維持力が不十分であったため粘着型義歯床安定用糊材(新ポリグリップ??)によって十分な維持力を確保した。
 なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
 PLP作製により,鼻咽腔逆流を防ぐことができリハビリテーション初期における栄養の確保の一助となった。またブローイング時の鼻からの息漏れが消失し,低舌圧に対しても改善が認められた。術後麻痺による軟口蓋挙上障害を有する上顎無歯顎症例に対しても,PLPは有効であった。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)