講演情報

[P-058]誤嚥リスクが高い患者にIntraoral Scannerを使用して光学印象を行い局部床義歯を製作した一症例

神山 大地1、○千原 明得2 (1. ZERO DENT合同会社、2. 医療法人眞仁会)
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【緒言・目的】健常者と比較して患者の身体的・精神的に治療が困難な歯科訪問診療の現場で、患者にかかる負担とリスクを可能な限り軽減させることは必要不可欠だと感じている。そこで、本症例では従来の義歯治療法ではなく、現段階で可能な限りのデジタルツールを駆使して局部床義歯を製作し、良好な結果が得られたので報告する。【症例および経過】80歳代、女性。2024年12月に入所中の施設で歯科訪問診療を受け、現在使用している局部床義歯の不適合を訴え新製を希望された。既往歴に高血圧症,パーキンソン病があった。また、嘔吐反射の症状も認められた。パーキンソン病を患っている為、従来のアルジネート印象材を使用しての印象採得は、印象採得時に誤嚥のリスクが非常に高い上に、嘔吐反射もあるため使用できないと判断した。そこで、本症例では従来の印象採得ではなくIntraoral Scannerを使用して光学印象を行った。このとき、嘔吐反射の症状は確認されなかった。また、Intraoral Scannerを使用して光学印象を行った際、仮咬合採得も同時に行うことができたため、必要最低限の調整のみで仮義歯試適を行うことができた。本義歯装着時も、適合状態及び咬合状態は良好でほぼ無調整で口腔内に装着された。【考察】歯科訪問診療では、患者本人もしくは家族から義歯の新製を望まれるが、患者の状態によっては治療が困難で要望に応えられない場合がある。もし治療を行ったとしても、歯科医院のようにユニットなどの器機が揃っておらず、急な状況変化にすぐに対応できない場合もある。歯科訪問診療において従来法での義歯治療は残念ながらリスクが高いと感じざるを得ない。しかし、本症例で行ったように可能な限りのデジタルツールを駆使して患者への負担や誤嚥などのリスクを軽減させることで、いままでは治療が困難であった患者へのアプローチが可能になるのではないかと思う。本症例では少数歯欠損の局部床義歯であったが、多数歯欠損の局部床義歯や全部床義歯も製作が可能であるため、今後症例数を増やし、経過を追っていきたい。なお, 本報告の発表について患者本人から同意を得ている。
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)