講演情報

[P-060]抗血栓薬が原因と考えられた抜歯後出血を繰り返した1症例

○小野 洋一1、間宮 秀樹1、太田 桃子1、菊地 幸信1、平野 昌保1、平山 勝徳1、秋元 宏惠1、西尾 純平1 (1. 公益財団法人 藤沢市歯科医師会)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【目的】社会の高齢化に伴い,基礎疾患を有する患者の歯科受診も増えている。今回,2次診療所において2種類の抗血栓薬服用患者に抜歯を行い,後出血,血餅増殖が続いたため,2回にわたって止血処置を行った症例を経験したので報告する。なお,発表については患者本人から文章による承認を得ている。【症例および経過】80歳男性。主訴:右上に穴があいている所が痛む,左下がグラグラして痛む,義歯の使用はなく摂食時疼痛のため鎮痛薬を常用。既往歴:急性動脈閉塞症のため右足切断,上行結腸がん,気管支喘息,橋本病。服用薬:クロピドグレル錠75mg,エリキュース錠5mg,他。抜歯1回目:初診時,治療計画立案後に動揺度3の左側下顎智歯を抜去。抜歯窩掻爬,酸化セルロース塡入後,6糸縫合。7日後,後出血はなかったが抜糸時に血餅増殖を認めたため除去し,ガーゼにて圧迫止血。抜歯2回目:動揺度2の右側上顎第2小臼歯および第1大臼歯を抜去。酸化セルロース塡入後に1糸縫合。3日後,後出血と疼痛のために来院。血餅除去,再掻爬,酸化セルロース塡入後に4糸縫合。4日後,血餅増殖と出血を認めたため,骨膜を剥離し鋭匙にて再々掻爬,不良肉芽除去,酸化セルロース塡入後に10糸縫合。3日後,止血確認,血餅増殖あり。4日後,出血がないため抜糸施行。抜歯3回目: 残根の左側上顎第1,2小臼歯を抜去。鋭匙にて不良肉芽を掻爬後,酸化セルロース塡入し,13糸縫合。抜歯3日後に止血確認。4日後,抜糸時に第2大臼歯部まで達した血餅増殖を認めたため除去し,以降は出血なし。【考察】2回目の抜歯時,基本的な止血処置を施行したにも関わらず後出血を来たしたことから,再来院時には歯槽骨の明示や不良肉芽を徹底的に除去し,歯肉弁の封鎖を目的とした緊密な縫合を行った。3回目の抜歯時には当初より対応したため,後出血はなかったが血餅の増殖を認め,本症例が2種類の抗血栓薬を服用しているために出血傾向が強いと考えられた。後出血の予想される症例では,当初よりマットレス縫合等の緊密な縫合に加え,レーザーや電気メス,局所止血剤の準備が必要と考えられた。(COI開示:なし)(藤沢市歯科医師会倫理委員会承認番号2024-007)