講演情報

[P-082]有床義歯装着中の要介護高齢者への義歯コーティング剤使用による口腔内細菌および口腔カンジダの抑制効果

○井手 淳太郎1、中島 正人1、松尾 幸子1、福田 安理1、縄田 和歌子2、佐藤 路子3、森田 浩光1 (1. 福岡歯科大学 成長発達歯学講座 障害者歯科学分野、2. 福岡歯科大学医科歯科総合病院 歯科衛生士部、3. 日本歯科大学 口腔リハビリテーション多摩クリニック)
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【目 的】
 介護施設入所中の要介護高齢者は免疫力低下や嚥下機能の低下等により誤嚥性肺炎のリスクが高いため定期口腔ケアが必要である。特に有床義歯使用者においては、義歯の不衛生により細菌や口腔カンジダの温床となることが報告されているため、誤嚥性肺炎のリスクがさらに高くなることから、介護者による徹底した義歯清掃が必要となる。以上の背景のもと、義歯コーティング剤処理が口腔環境の改善(口腔内細菌および口腔カンジダの抑制)に影響を及ぼすかについて全身状態を含めて調査・検討したので報告する。
【対象と方法】
 2023年5月〜2024年11月の期間に、近隣の介護老人福祉施設(特養)に入居中で定期訪問口腔衛生管理をおこなっている義歯使用中の要介護高齢者24名(入所に至る病名・障害:認知症22名、脳血管障害2名)を対象として、義歯コーティング剤(キレイキープⅡ®︎)処理の有無により口腔内細菌および口腔カンジダの数が変化するかについてクロスオーバー試験により調査した。口腔内細菌数および口腔カンジダの数の測定は、それぞれ口腔内細菌カウンタ®︎(パナソニック社)およびカンジダディテクター®︎(亀水化学工業株式会社)を使用し、統計解析にはWilcoxonの順位和検定を用いた。一方、全身項目として要介護度、障害高齢者の日常生活自立度およびチャールソン併存疾患指数と義歯コーティング剤塗布による口腔細菌数および口腔カンジダ数の減少の有無についてカイ2乗検定により解析を行った。なお、本調査に際し、対象者または家族に事前に書面による同意を得た。
【結 果】
 対象者の平均年齢は89.4±6.9歳、性別は男性3名、女性21名であった。口腔内細菌および口腔カンジダの数は、対照群(義歯コーティング剤処理なし)では両者とも統計的に有意な減少は認められなかった一方で、義歯コーティング剤処理群では両者とも有意な減少を認めた(口腔内細菌数:p<0.01、口腔カンジダ数:p<0.01)。一方、全身状態と義歯コーティング剤塗布による口腔細菌数および口腔カンジダ数の減少については、すべての項目において有意差を認めなかった。
【まとめと考察】
 以上の結果から、義歯コーティング剤処理は義歯の清掃性を高めるだけでなく、全身状態にかかわらず口腔内環境の維持(口腔内細菌および口腔カンジダの抑制)にも貢献することが示唆された。
(COI 開示:なし)
(学校法人福岡学園倫理審査委員会承認番号589号、UMIN試験ID: UMIN000055399)