講演情報
[P-088]地域在住高齢者におけるウェアラブル嚥下計による定量評価と嚥下質問紙評価との関連:板橋健康長寿縦断研究
○白部 麻樹1、岩崎 正則1,2、本川 佳子1、五味 達之祐1、岡村 毅1、笹井 浩行1、鈴木 健嗣3、平野 浩彦1 (1. 東京都健康長寿医療センター研究所自立促進と精神保健研究チーム、2. 北海道大学大学院歯学研究院 口腔健康科学講座、3. 筑波大学システム情報系)
【目的】
口腔機能低下症は複合的に口腔機能が低下している疾患であり,放置すると摂食嚥下障害などに陥る可能性がある。摂食嚥下障害の精密検査は専門性が高く,実施が難しい場合がある。一方,近年では嚥下機能評価の様々なデバイスが開発され,多様な評価法が注目されている。そこで,頸部からの音に基づいて飲食物を口に入れてから嚥下完了までの時間を測定できるウェアラブル嚥下計を用いて,嚥下の定量評価を行った。本研究は,ウェアラブル嚥下計による摂食嚥下時間と嚥下機能との関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】
2024年実施の板橋健康長寿縦断研究の会場調査参加者 を対象とした。解析対象は,脳卒中,認知症,パーキンソン病を有さず,調査項目にデータ欠損の無い者とした。調査項目は,性,年齢,既往歴,ウェアラブル嚥下計による摂食嚥下時間(GOKURIネックバンド,PLIMES社製),嚥下機能(嚥下スクリーニング質問紙EAT-10),咀嚼機能(咀嚼能力測定用グミゼリー,UHA味覚糖社製)とした。摂食嚥下時間は液体(水5ml)および固形物(約5cm四方クラッカー)を摂取した時間(秒)を計測した。性,咀嚼機能低下(2点以下),嚥下機能低下(3点以上)別に群間比較し,さらに摂食嚥下時間を従属変数,嚥下機能低下の有無を独立変数,性,年齢,咀嚼機能低下の有無を調整変数として,重回帰分析を行った。
【結果と考察】
解析対象者416名(男性237名,女性179名,平均年齢76.1±3.4歳)中,嚥下機能低下者は116名(27.9%)であった。群間比較の結果,液体の摂食嚥下時間は有意に男性が長く,固形物の摂食嚥下時間は有意に女性が長く,嚥下機能低下者が長かった(p<0.05)。重回帰分析の結果,固形物の摂食嚥下時間は有意に嚥下機能低下者が長かった(偏回帰係数[95%信頼区間]=4.4[1.5-7.3])。また液体の摂食嚥下時間と有意な関連はなかった。健常高齢者を対象としたため,少量の液体嚥下に問題のある対象者が少なかったことによる影響も推察された。以上より,ウェアラブル嚥下計による摂食嚥下時間は,固形物において嚥下機能低下と関連があることが示唆された。今後,嚥下障害を引き起こす全身疾患等の状態別にさらなる検討が必要と考える。
(COI 開示:PLIMES株式会社)
(東京都健康長寿医療センター研究倫理審査委員会承認番号 R21-056)
口腔機能低下症は複合的に口腔機能が低下している疾患であり,放置すると摂食嚥下障害などに陥る可能性がある。摂食嚥下障害の精密検査は専門性が高く,実施が難しい場合がある。一方,近年では嚥下機能評価の様々なデバイスが開発され,多様な評価法が注目されている。そこで,頸部からの音に基づいて飲食物を口に入れてから嚥下完了までの時間を測定できるウェアラブル嚥下計を用いて,嚥下の定量評価を行った。本研究は,ウェアラブル嚥下計による摂食嚥下時間と嚥下機能との関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】
2024年実施の板橋健康長寿縦断研究の会場調査参加者 を対象とした。解析対象は,脳卒中,認知症,パーキンソン病を有さず,調査項目にデータ欠損の無い者とした。調査項目は,性,年齢,既往歴,ウェアラブル嚥下計による摂食嚥下時間(GOKURIネックバンド,PLIMES社製),嚥下機能(嚥下スクリーニング質問紙EAT-10),咀嚼機能(咀嚼能力測定用グミゼリー,UHA味覚糖社製)とした。摂食嚥下時間は液体(水5ml)および固形物(約5cm四方クラッカー)を摂取した時間(秒)を計測した。性,咀嚼機能低下(2点以下),嚥下機能低下(3点以上)別に群間比較し,さらに摂食嚥下時間を従属変数,嚥下機能低下の有無を独立変数,性,年齢,咀嚼機能低下の有無を調整変数として,重回帰分析を行った。
【結果と考察】
解析対象者416名(男性237名,女性179名,平均年齢76.1±3.4歳)中,嚥下機能低下者は116名(27.9%)であった。群間比較の結果,液体の摂食嚥下時間は有意に男性が長く,固形物の摂食嚥下時間は有意に女性が長く,嚥下機能低下者が長かった(p<0.05)。重回帰分析の結果,固形物の摂食嚥下時間は有意に嚥下機能低下者が長かった(偏回帰係数[95%信頼区間]=4.4[1.5-7.3])。また液体の摂食嚥下時間と有意な関連はなかった。健常高齢者を対象としたため,少量の液体嚥下に問題のある対象者が少なかったことによる影響も推察された。以上より,ウェアラブル嚥下計による摂食嚥下時間は,固形物において嚥下機能低下と関連があることが示唆された。今後,嚥下障害を引き起こす全身疾患等の状態別にさらなる検討が必要と考える。
(COI 開示:PLIMES株式会社)
(東京都健康長寿医療センター研究倫理審査委員会承認番号 R21-056)