講演情報
[P-090]重度摂食嚥下障害に対する舌接触補助床作製症例の臨床統計
○後藤 拓朗1 (1. 三豊総合病院)
【目的】
当院は香川県西部に位置し高齢化率35%を超える地域の基幹病院であり,入院患者の中には摂食嚥下障害が顕著な者も多い。摂食嚥下障害が疑われる患者が入院した際は摂食嚥下チームが評価し,必要な症例は嚥下造影検査等を実施している。その際十分な経口摂取が難しい場合,必要なら舌接触補助床(以下PAP)を作製している。そこで現状のPAP作製状況を確認し,今後の方針を検討していく。
【方法】
対象期間は2021年1月から2024年12月とした。対象患者は期間中に当院医科に入院した患者で摂食嚥下障害を有しており,嚥下造影検査にて重度の摂食嚥下障害を認めPAPを作製した患者とした。重度の摂食嚥下障害は嚥下造影検査時にFILS6以下の者とした。
対象患者の診療録より後方視的に年齢,性別,BMI,基礎疾患,入院日,退院日,PAP作製日,PAP作製前後及び退院時のFILSなどについて集計を行った。PAPの作製は摂食嚥下リハビリテーション臨床経験10年以上の歯科医師1名が行い,PAPの口蓋形態は嚥下造影検査を行い決定した。統計学的検討はEZRにてKruskal-Wallis検定,Steel-Dwass検定を行い,統計学的有意差をp<0.05とした。
【結果と考察】
対象人数は期間中PAPを作製した入院患者43名のうち,死亡退院となった8名を除く35名であった(男性34名,女性1名,平均年齢81.1±8.2歳,BMI:17.3±2.2,入院期間中央値:47日)。PAP作製日は中央値19日(最小5日最大81日)であった。PAP作製前のFILS中央値は6,作製後は7,退院時は8であった。また入院日からPAP作製日まで期間で3群に分類し患者の入院期間を比較した。12日以内をA群(12名,入院期間中央値35日),13-26日をB群(13名,入院期間中央値43日),27-81日をC群(10名,入院期間中央値90日)とし,3群間で比較するとP = 0.00802で有意差を認めた。また各2群間の比較ではA-B群間P=0.538,A-C群間P=0.0114,B-C群間P=0.0519であり,A-C群間で有意差を認めた。
PAP作製の対象患者の多くがBMI18.5以下であり,またVFにて喉頭下垂の所見が認められた。対象者に男性が多かったのはフレイル・サルコペニアの背景を持っていたため,喉頭下垂の影響の強い男性が多かったと考えられた。またPAP作製は26日以内の作製が入院期間の短縮に寄与する可能性が示唆された。今後もなるべく早期のPAP作製体制を整えるようにしていきたい。
(三豊総合病院臨床研究審査委員会 承認番号24-CR01-316)
(COI 開示:なし)
当院は香川県西部に位置し高齢化率35%を超える地域の基幹病院であり,入院患者の中には摂食嚥下障害が顕著な者も多い。摂食嚥下障害が疑われる患者が入院した際は摂食嚥下チームが評価し,必要な症例は嚥下造影検査等を実施している。その際十分な経口摂取が難しい場合,必要なら舌接触補助床(以下PAP)を作製している。そこで現状のPAP作製状況を確認し,今後の方針を検討していく。
【方法】
対象期間は2021年1月から2024年12月とした。対象患者は期間中に当院医科に入院した患者で摂食嚥下障害を有しており,嚥下造影検査にて重度の摂食嚥下障害を認めPAPを作製した患者とした。重度の摂食嚥下障害は嚥下造影検査時にFILS6以下の者とした。
対象患者の診療録より後方視的に年齢,性別,BMI,基礎疾患,入院日,退院日,PAP作製日,PAP作製前後及び退院時のFILSなどについて集計を行った。PAPの作製は摂食嚥下リハビリテーション臨床経験10年以上の歯科医師1名が行い,PAPの口蓋形態は嚥下造影検査を行い決定した。統計学的検討はEZRにてKruskal-Wallis検定,Steel-Dwass検定を行い,統計学的有意差をp<0.05とした。
【結果と考察】
対象人数は期間中PAPを作製した入院患者43名のうち,死亡退院となった8名を除く35名であった(男性34名,女性1名,平均年齢81.1±8.2歳,BMI:17.3±2.2,入院期間中央値:47日)。PAP作製日は中央値19日(最小5日最大81日)であった。PAP作製前のFILS中央値は6,作製後は7,退院時は8であった。また入院日からPAP作製日まで期間で3群に分類し患者の入院期間を比較した。12日以内をA群(12名,入院期間中央値35日),13-26日をB群(13名,入院期間中央値43日),27-81日をC群(10名,入院期間中央値90日)とし,3群間で比較するとP = 0.00802で有意差を認めた。また各2群間の比較ではA-B群間P=0.538,A-C群間P=0.0114,B-C群間P=0.0519であり,A-C群間で有意差を認めた。
PAP作製の対象患者の多くがBMI18.5以下であり,またVFにて喉頭下垂の所見が認められた。対象者に男性が多かったのはフレイル・サルコペニアの背景を持っていたため,喉頭下垂の影響の強い男性が多かったと考えられた。またPAP作製は26日以内の作製が入院期間の短縮に寄与する可能性が示唆された。今後もなるべく早期のPAP作製体制を整えるようにしていきたい。
(三豊総合病院臨床研究審査委員会 承認番号24-CR01-316)
(COI 開示:なし)