講演情報
[P-092]立位困難な療養患者に対するピンチ力を用いたサルコペニアおよびフレイルの早期評価に関する研究
○本田 健太郎1、中島 純子1、酒井 克彦1、鈴木 美紅2、井口 祐子2、財津 愛2、大屋 朋子2、森田 奈那1、松浦 信幸1 (1. 東京歯科大学オーラルメディシン・病院歯科学講座、2. 東京歯科大学市川総合病院コ・デンタル部)
【目的】
サルコペニアやフレイルの評価における筋力の測定では,握力が用いられている。しかし,高齢者や長期入院患者,特に立位や座位の保持が困難な患者においては,握力測定が正確に行えない場合が多く,そのためサルコペニアやフレイルの評価が十分に行えないことがある。拇指と示指の指腹で挟む力を測定するピンチ力は,仰臥位でも簡便に測定でき,口腔機能や身体機能との関連が示唆されている。本研究の目的は,立位が保てない入院患者に対するサルコペニア及びフレイルの評価において、ピンチ力測定の有用性を検証することである。
【方法】
対象者は2021年7月~2023年3月までに,東京歯科大学市川総合病院歯科・口腔外科で口腔衛生管理を行った入院患者のうち,指示内容の理解が可能で,四肢の運動に障害がない患者225名(男性147名,女性78名,平均年齢81.6 ±7.21歳)とした。口腔機能衛生管理開始時に,口腔機能と栄養状態および身体機能の評価を目的に下腿周囲長(CC),オーラルディアドコキネシス(OD),舌圧,握力,B&L型ピンチゲージ(日本メディックス社製)によるピンチ力の評価を行った。測定はベッド上で行い,ギャッチアップが不可能な患者は仰臥位で測定を行った。
【結果と考察】
対象者のうち61名は握力の測定が困難であったが,そのうち55名はピンチ力の測定は可能であった。握力測定が可能であった164名における握力の平均は男性16.0±7.3 kg,女性10.4±3.8 kg,ピンチ力の平均は男性9.2±4.5kg,女性7.3±3.0kg,共に男女間で有意差を認めた(p<0.01)。握力とピンチ力の相関係数は0.71であり強い相関を認め(p<0.01),近似式は(ピンチ力)=(握力)×0.4 +2.4であった。 また,ピンチ力はOD,CC,舌圧と握力はOD,CCと有意な相関を認め,相関係数はピンチ力の方が高かった。健常者においてピンチ力は握力と比べ,身体機能との相関は弱いとの報告があるが,握力が正しく測定できない療養患者において,ピンチ力の口腔機能と身体機能との相関は握力より高かった。手技が簡単で負担が少ないピンチ力測定は,療養患者等に対する筋力評価の代替法として有益であることが示唆された。
(COI開示:なし,東京歯科大学市川総合病院倫理審査委員会承認番号 I 21-34RⅡ)
サルコペニアやフレイルの評価における筋力の測定では,握力が用いられている。しかし,高齢者や長期入院患者,特に立位や座位の保持が困難な患者においては,握力測定が正確に行えない場合が多く,そのためサルコペニアやフレイルの評価が十分に行えないことがある。拇指と示指の指腹で挟む力を測定するピンチ力は,仰臥位でも簡便に測定でき,口腔機能や身体機能との関連が示唆されている。本研究の目的は,立位が保てない入院患者に対するサルコペニア及びフレイルの評価において、ピンチ力測定の有用性を検証することである。
【方法】
対象者は2021年7月~2023年3月までに,東京歯科大学市川総合病院歯科・口腔外科で口腔衛生管理を行った入院患者のうち,指示内容の理解が可能で,四肢の運動に障害がない患者225名(男性147名,女性78名,平均年齢81.6 ±7.21歳)とした。口腔機能衛生管理開始時に,口腔機能と栄養状態および身体機能の評価を目的に下腿周囲長(CC),オーラルディアドコキネシス(OD),舌圧,握力,B&L型ピンチゲージ(日本メディックス社製)によるピンチ力の評価を行った。測定はベッド上で行い,ギャッチアップが不可能な患者は仰臥位で測定を行った。
【結果と考察】
対象者のうち61名は握力の測定が困難であったが,そのうち55名はピンチ力の測定は可能であった。握力測定が可能であった164名における握力の平均は男性16.0±7.3 kg,女性10.4±3.8 kg,ピンチ力の平均は男性9.2±4.5kg,女性7.3±3.0kg,共に男女間で有意差を認めた(p<0.01)。握力とピンチ力の相関係数は0.71であり強い相関を認め(p<0.01),近似式は(ピンチ力)=(握力)×0.4 +2.4であった。 また,ピンチ力はOD,CC,舌圧と握力はOD,CCと有意な相関を認め,相関係数はピンチ力の方が高かった。健常者においてピンチ力は握力と比べ,身体機能との相関は弱いとの報告があるが,握力が正しく測定できない療養患者において,ピンチ力の口腔機能と身体機能との相関は握力より高かった。手技が簡単で負担が少ないピンチ力測定は,療養患者等に対する筋力評価の代替法として有益であることが示唆された。
(COI開示:なし,東京歯科大学市川総合病院倫理審査委員会承認番号 I 21-34RⅡ)