講演情報

[P-100]急性期病院におけるがん周術期患者のオーラルフレイルに関する実態調査の取り組み

○市ノ澤 将史1、大平 真理子2、高橋 光1、高久 勇一朗1、山下 秀一郎2 (1. 東京都立豊島病院 歯科口腔外科、2. 東京歯科大学 パーシャルデンチャー補綴学講座)
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【目的】
 東京都立豊島病院(以下当科)は年間420症例(令和5年度)のがん手術症例を有する急性期病院である。がん手術予定の患者に対し,多職種で構成される入院サポートチームで挿管時の誤飲・誤嚥リスク因子である動揺歯の精査・処置を始め,術前から術後に渡る口腔衛生管理を行っている。当科においては,対象者に対し入院サポートの一環として年間約400件の周術期口腔機能管理を行っているが,口腔ケアや急性症状のある歯に対する応急的な治療が中心となっている。しかし,過去には胃がんの術前患者に口腔機能の低下を認めた報告もあり,術前に口腔機能が低下していることが分かれば,術後や退院後の口腔機能の低下を予測し,適切なサポートにつなげられるのではないかと考えた。2024年に発表されたOral frailty 5-item Checklist (OF-5)は,5つの質問からなるアンケート形式の評価法であり,5項目中2つ以上に当てはまる場合は『オーラルフレイル』と判定するものである。そこで,無自覚のオーラルフレイル患者を抽出し適切なサポートにつなげるために,がんの手術予定で周術期口腔機能管理の依頼のあった患者にOF-5の実施を開始した。今回,当院で開始した取り組みについて報告する。
【方法】
 2024年11月~12月に周術期口腔機能管理のために当科受診をした患者のうち認知機能に問題がなくOF-5に回答できた10名について,OF-5,口腔内診察,基本チェックリスト(KCL),咀嚼機能評価表,オーラルディアドコキネシスを実施した。
【結果と考察】
 OF-5で評価したところ,10名中6名にオーラルフレイルに該当した。該当者全員が口腔乾燥感を自覚していた。また,該当者のうち4名はOF-5の調査票では滑舌の低下を自覚していなかったが,オーラルディアドコキネシスでスコアの低値を認めた。このことから,主観的な症状のない無自覚のオーラルフレイル患者がいることが判明した。今後は入院サポートチームでの問診にOF-5を取り入れ,無自覚のオーラルフレイル患者を見つけ出し,当科での適切な評価や介入を開始し,退院後にはかかりつけ歯科での口腔衛生管理および口腔機能管理を継続できる仕組みや,当院リハビリテーション科との連携を構築していきたい。
(COI 開示:なし)
(東京都立豊島病院 倫理委員会承認番号 倫臨迅6-80)