講演情報

[P-102]オーラルディアドコキネシス発音時の発音明瞭度と口腔機能の関連性検討

○安藤 万乃1、青山 薫英1、留岡 諭志1、荒木 尋斗1、南 翔太2、武重 百香2、廉 キン2、内山 千代子1、栗田 啓1 (1. ライオン株式会社 口腔健康科学研究所、2. ライオン株式会社 デジタル戦略部)
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【目的】
 舌口唇運動機能の検査(オーラルディアドコキネシス)では,/pa//ta//ka/の1秒当たりの発音回数が測定される。一方,口腔機能低下に伴い発音の明瞭度も低下することが臨床知見として知られているが,明瞭度を客観的に評価し口腔機能との関連を調査した報告はほとんどない。そこで,/pa//ta//ka/発音の音響学的な特徴から明瞭な発音か否かを判定することで,明瞭度を評価するアルゴリズムを開発した。本研究は,オーラルディアドコキネシス発音時の発音明瞭度と口腔機能の関連性を検討することを目的とした。
【方法】
 2024年6月~8月に,25~74歳の健常成人80名を対象とし,口腔機能に関する検査(オーラルディアドコキネシス,舌圧,咬合力,咀嚼能率,RSST),口腔内の検査(残存歯数,う蝕経験歯数,アイヒナー分類,機能歯ユニット,アングルの分類),体組成の測定を行った。また,生活習慣や口腔の自覚症状に関する情報をアンケートにより聴取した。オーラルディアドコキネシスの検査の際には,発音時の音声データを録音した。その後オプトアウトを実施し,研究利用(2次利用)の同意を撤回しなかった78名(男性40名,女性38名,平均年齢49.7±14.3歳)を対象に,オーラルディアドコキネシス発音時の発音明瞭度と口腔機能の各検査結果との相関解析を行った。また,口腔機能の各検査結果をそれぞれ目的変数とし,オーラルディアドコキネシス発音時の発音明瞭度,発音回数,年齢,性別等を説明変数とした重回帰分析を行った。
【結果と考察】
 被験者全体では発音明瞭度と口腔機能の各検査結果の間に有意な相関は認められなかったが,口腔機能低下症の診断対象である50歳以上の被験者群では,発音明瞭度と一部の口腔機能の検査結果の間に有意な相関を認めた。また,重回帰分析の結果,調整因子の影響を考慮しても舌圧等の口腔機能の検査結果と発音明瞭度との間に有意な関連が認められた。以上のことから,今回開発した発音明瞭度が口腔機能の評価指標の1つとして有用である可能性が示唆された。
(COI 開示:ライオン株式会社)
(ライオン株式会社倫理審査委員会 臨床審査No.395,No.398)