講演情報
[P-106]外来通院患者に対するオーラルフレイル対策プログラムの有用性検討
○加藤 陽子1,2、青山 薫英3、内山 千代子3、菊谷 武1,2 (1. 日本歯科大学 口腔リハビリテーション多摩クリニック、2. 日本歯科大学附属病院 口腔リハビリテーション科、3. ライオン株式会社 口腔健康科学研究所)
【目的】
口腔機能トレーニングとしては口腔体操等が挙げられるが, 種類が多く,自身の状態に適した方法を理解・選択して実践することは難しい。そこで演者らは,専用のキットとスマートフォンアプリで簡便に口腔機能を評価し,利用者に適したトレーニングメニューを提供するオーラルフレイル対策プログラム(以下、ORAL FIT)を開発した。本研究では,口腔機能低下が認められる外来通院患者に対するORAL FITの有用性検討を目的とした。
【方法】
2022年4月から2023年4月までの間,日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニックを外来受診した口腔機能の低下が認められる患者19名 (男性10名,女性9名,平均年齢78.62±6.58歳)を対象(介入群)とした。介入群には,口腔機能精密検査(舌苔の付着程度,口腔粘膜湿潤度, 咬合力,オーラルディアドコキネシス(以下ODK),舌圧,咀嚼能力,EAT-10)及び通常の診療内で行われる口腔機能管理を行い,並行して2か月間ORAL FITを体験させた。被験者はORAL FIT体験開始時にキットとアプリを用いて口腔機能を自己評価し,結果を基に提案されたコースを自身で選択し毎日配信される動画に沿ってトレーニングを実施した。ORAL FIT体験終了後,アンケート調査・口腔機能検査を実施し,口腔機能の改善実感有無の集計,ORAL FIT体験前後の口腔機能精密検査の値の比較を行った。また探索的検討として,対象期間中に同クリニックで口腔機能管理を受け,ORAL FITを体験しなかった外来患者から外部対照群を抽出し,口腔機能管理前後の口腔機能精密検査の値の変化率について介入群と比較した。
【結果と考察】
介入群19名中15名が試験を終了した。体験終了後のアンケートでは,15名中10名が「噛むことを意識するようになった」,8名が「むせることが減った気がする」「頬や舌を噛むことが減った気がする」と回答し,ORAL FITが通院患者の行動変容・口腔機能トレーニングに有用である可能性が示された。口腔機能精密検査の値はいずれもORAL FIT体験前後で有意な変化を認めなかった。一方でODK /ka/の変化率は,ODK /ka/の初期値・年齢・性別を用いた傾向スコアマッチングの結果, 口腔機能管理のみ受けた外部対照群と比べ,口腔機能管理に加えORAL FITを体験した介入群において有意に高値を示した。本研究はサンプルサイズ不足などの研究限界があるため,今後最適な試験設計の下,ORAL FITが口腔機能に及ぼす影響を明らかにしていく。
(COI 開示:ライオン株式会社)
(日本歯科大学 倫理審査委員会承認番号 NDU-T2021-60)
口腔機能トレーニングとしては口腔体操等が挙げられるが, 種類が多く,自身の状態に適した方法を理解・選択して実践することは難しい。そこで演者らは,専用のキットとスマートフォンアプリで簡便に口腔機能を評価し,利用者に適したトレーニングメニューを提供するオーラルフレイル対策プログラム(以下、ORAL FIT)を開発した。本研究では,口腔機能低下が認められる外来通院患者に対するORAL FITの有用性検討を目的とした。
【方法】
2022年4月から2023年4月までの間,日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニックを外来受診した口腔機能の低下が認められる患者19名 (男性10名,女性9名,平均年齢78.62±6.58歳)を対象(介入群)とした。介入群には,口腔機能精密検査(舌苔の付着程度,口腔粘膜湿潤度, 咬合力,オーラルディアドコキネシス(以下ODK),舌圧,咀嚼能力,EAT-10)及び通常の診療内で行われる口腔機能管理を行い,並行して2か月間ORAL FITを体験させた。被験者はORAL FIT体験開始時にキットとアプリを用いて口腔機能を自己評価し,結果を基に提案されたコースを自身で選択し毎日配信される動画に沿ってトレーニングを実施した。ORAL FIT体験終了後,アンケート調査・口腔機能検査を実施し,口腔機能の改善実感有無の集計,ORAL FIT体験前後の口腔機能精密検査の値の比較を行った。また探索的検討として,対象期間中に同クリニックで口腔機能管理を受け,ORAL FITを体験しなかった外来患者から外部対照群を抽出し,口腔機能管理前後の口腔機能精密検査の値の変化率について介入群と比較した。
【結果と考察】
介入群19名中15名が試験を終了した。体験終了後のアンケートでは,15名中10名が「噛むことを意識するようになった」,8名が「むせることが減った気がする」「頬や舌を噛むことが減った気がする」と回答し,ORAL FITが通院患者の行動変容・口腔機能トレーニングに有用である可能性が示された。口腔機能精密検査の値はいずれもORAL FIT体験前後で有意な変化を認めなかった。一方でODK /ka/の変化率は,ODK /ka/の初期値・年齢・性別を用いた傾向スコアマッチングの結果, 口腔機能管理のみ受けた外部対照群と比べ,口腔機能管理に加えORAL FITを体験した介入群において有意に高値を示した。本研究はサンプルサイズ不足などの研究限界があるため,今後最適な試験設計の下,ORAL FITが口腔機能に及ぼす影響を明らかにしていく。
(COI 開示:ライオン株式会社)
(日本歯科大学 倫理審査委員会承認番号 NDU-T2021-60)