講演情報

[P-112]地域在住高齢者における機能歯数と終末糖化産物の関連:お達者健診研究

○細川 知隆1,2、岩崎 正則2,3、白部 麻樹2、本川 佳子2、五味 達之祐2、枝広 あや子2、大渕 修一2、平野 浩彦2、正木 千尋1、上野 結衣1、細川 隆司1 (1. 九州歯科大学大学院歯学研究科 口腔再建リハビリテーション学分野、2. 東京都健康長寿医療センター研究所、3. 北海道大学大学院歯学研究院)
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【目的】終末糖化産物(Advanced Glycation Endoproducts/AGEs)の蓄積はさまざまな疾患の原因,増悪因子として近年注目されている。AGEs蓄積量は食事内容に影響を受けることが報告されている。AGEs蓄積量が多いということは,全身組織の糖化が進行しており,様々な全身疾患の罹患リスクが高まっている可能性がある。機能歯数の低下は,食事内容変化による栄養素摂取バランスの偏りをもたらすとされている。そこで我々は,「機能歯数の低下はAGEsの蓄積量を増加させる」との仮説の下,地域在住高齢者における機能歯数とAGEsとの関連について検討した。
【方法】2023年実施の65歳以上の地域在住高齢者を対象とした来場型健診(お達者健診研究)参加者のうち,データ欠損のない者を解析対象とした。AGE Reader (Diagnoptics Technologies B.V.社製)を用い,原則として利き腕前腕内側の肘関節付近の表皮で3回位置を変えて測定し,AGEsスコアの平均値を算出した。この値が高いほど測定部位の皮膚にAGEsが蓄積しており,全身組織の糖化が進行している傾向があることを意味する。機能歯数は口腔診査結果から求めた。目的変数をAGEs,説明変数を機能歯数,共変量を年齢,性別,教育年数,喫煙状況,飲酒習慣,併存症の数とする重回帰分析を用いて機能歯数とAGEsの関連を評価した。
【結果と考察】研究対象集団(570名 [男性213名、女性357名]、平均年齢73.7歳)におけるAGEsの平均値(標準偏差)は2.40(0.41)であった。重回帰分析の結果,機能歯数はAGEs蓄積量と統計的に有意に関連していた(機能歯1歯増加ごとのAGEsに対する非標準化回帰係数 [95%信頼区間]= -0.016[-0.026 to -0.006])。本研究から,65歳以上の地域在住高齢者において,機能歯数が多いということはAGEs蓄積量が低く,組織の糖化度が低いことと関連することが示唆された。しかし本研究は横断研究であるため,機能歯数とAGEs蓄積量の関係を利用した健康増進へ寄与する方法を導き出すには,今後は経時的なAGEs蓄積量を評価する縦断研究が必要である。
(COI 開示:なし)
(東京都健康長寿医療センター研究倫理審査委員会承認番号 R22-034)