講演情報

[BS1]いま知っておきたい!合併基礎疾患の「基本のき」 ~超高齢社会への第一歩

○松浦 信幸1 (1. 東京歯科大学 歯科麻酔学講座)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【略歴】
1991年 東京農業大学 農学部醸造学科(現:応用生物科学部醸造科学科)卒業
1991年 豪州 University of Tasmania 農学部大学院 留学
1992年 米国 University of California, Berkeley校 留学
2000年 東京歯科大学 卒業
2004年 東京歯科大学 大学院歯学研究科(歯科麻酔学専攻) 修了
2004年 東京大学 医学部付属病院麻酔科 医員
2005年 東京歯科大学 歯科麻酔学講座 助手
2011年 東京歯科大学 歯科麻酔学講座 講師
2016年 東京歯科大学 歯科麻酔学講座 准教授
2020年 東京歯科大学 歯科麻酔学講座 教授
2020年 東京歯科大学 オーラルメディシン・病院歯科学講座 主任教授
2025年 東京歯科大学 歯科麻酔学講座 主任教授
現在に至る
我が国の人口は2010年を境に減少へと転じ、2025年には団塊の世代が75歳を迎えることにより、全人口の約30%にあたる3,653万人が高齢者となり、そのうち約2,154万人(人口の約18%)が後期高齢者に達すると推計されています。これは、世界的にも前例のないスピードで進行する超高齢社会であり、今後の医療・介護体制に多大な影響を及ぼすことが懸念されています。  
 このような社会構造の変化に伴い、複数の合併基礎疾患(持病)を有する高齢患者の数も急増しており、医療現場―とりわけ歯科医療においても―その対応の重要性が一層高まっています。  
 なかでも高血圧は、もっとも一般的かつ重要な慢性疾患のひとつであり、いわゆる“国民病”とも称されています。日本高血圧学会が2017年に発表した推計によれば、未治療の患者を含めた全国の高血圧患者数は約4,300万人にのぼり、その約70%が60歳以上であると報告されています。高血圧は進行するまで自覚症状が乏しいことから、健康診断などで指摘されても治療に至らず放置されるケースが少なくないという課題があります。
 しかし、高血圧を放置し続けると、動脈が徐々に硬化・脆弱化し、狭心症や心筋梗塞、脳卒中、慢性腎臓病など、生命予後に深く関わる重大な疾患を引き起こすリスクが高まります。このため、高血圧は「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」とも呼ばれています。  
 現在、複数の持病を抱える高齢患者が歯科医院を受診する機会は年々増加しており、歯科治療においても全身状態に対する医学的配慮が欠かせません。とくに高血圧は、局所麻酔や観血的処置、治療時のストレスによる血圧上昇など、さまざまな場面でリスク因子となり得るため、歯科医療従事者には十分な理解と的確な対応が求められます。  
 本講演では、安心・安全な歯科医療を提供するうえで知っておくべき、高血圧をはじめとする有病高齢者の基礎疾患に関する基本的な知識と、歯科治療時における具体的な留意点について、最新の知見を交えながら解説いたします。