講演情報
[認定P-2]咀嚼嚥下機能低下を認めた高齢者に対し訪問診療で対応し咀嚼嚥下機能改善が認められた症例
○荻原 宏志1、渡邊 裕2 (1. 勤医協きたく歯科診療所、2. 北海道大学大学院歯学研究院口腔健康科学分野高齢者歯科学講座)
【緒言・目的】
在宅介護において家族の存在は重要であるとともに状況により負担の大きさは異なる。今回,体重減少と嚥下機能低下を認めた高齢者に対し,義歯作製と口腔管理を行ったことにより体重増加と食事時間短縮の改善を認め,家族への負担が軽減した1例について報告する。
【症例および経過】
86歳,女性。高血圧と緑内障の既往あり。長男と同居。食事量,体重減少を主訴に訪問診療の依頼を受けた。1年以上前から義歯不使用となり一日の食事に3時間以上かかっていた。初診時一日中ベッド上で過ごしており、身長150cm未満30kg直近3か月で2kgの体重減少があった。嚥下内視鏡検査にて口腔咽頭移送時間の延長、嚥下反射惹起遅延を認めた。義歯作製を開始し、週一回の口腔衛生管理と嚥下体操,舌のストレッチなどの訓練を行い,食形態の調整と離床時間を増やすことの指導を行った。義歯装着2か月後には1分以上かかっていた一口の嚥下までの時間が30秒程度に改善、嚥下内視鏡検査で咀嚼開始食品が十分に咀嚼された状態で咽頭に移送されていることが確認できた。食事時間は2時間程度に短縮された。唯一の介護者である息子さんより介護負担が減ったと申告があり、体重は2kg増加が認められた。聖隷式嚥下質問では初診時にあった4つのA項目はすべてB以下に改善していた。なお,本症例の発表について患者代諾者より文書による同意を得ている。
【考察】
義歯作製による咀嚼機能の回復と訓練によって栄養状態と咀嚼嚥下機能の改善が認められ,介護者の食事介助時間の減少につながり負担を減らすことができた。その後約5年間口腔健康管理を続け誤嚥性肺炎を発症することなく2022年12月患者は老衰で亡くなられた。数日後,息子から介護負担の減少や最期まで経口摂取できたことに対し感謝の言葉をいただいた。訓練や食事の指導を行う際には患者のみならず介助者への負担という視点を持つことが重要である。振り返って十分ではなかった多職種や必要に応じた高次医療機関との連携は今後の課題である。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)
在宅介護において家族の存在は重要であるとともに状況により負担の大きさは異なる。今回,体重減少と嚥下機能低下を認めた高齢者に対し,義歯作製と口腔管理を行ったことにより体重増加と食事時間短縮の改善を認め,家族への負担が軽減した1例について報告する。
【症例および経過】
86歳,女性。高血圧と緑内障の既往あり。長男と同居。食事量,体重減少を主訴に訪問診療の依頼を受けた。1年以上前から義歯不使用となり一日の食事に3時間以上かかっていた。初診時一日中ベッド上で過ごしており、身長150cm未満30kg直近3か月で2kgの体重減少があった。嚥下内視鏡検査にて口腔咽頭移送時間の延長、嚥下反射惹起遅延を認めた。義歯作製を開始し、週一回の口腔衛生管理と嚥下体操,舌のストレッチなどの訓練を行い,食形態の調整と離床時間を増やすことの指導を行った。義歯装着2か月後には1分以上かかっていた一口の嚥下までの時間が30秒程度に改善、嚥下内視鏡検査で咀嚼開始食品が十分に咀嚼された状態で咽頭に移送されていることが確認できた。食事時間は2時間程度に短縮された。唯一の介護者である息子さんより介護負担が減ったと申告があり、体重は2kg増加が認められた。聖隷式嚥下質問では初診時にあった4つのA項目はすべてB以下に改善していた。なお,本症例の発表について患者代諾者より文書による同意を得ている。
【考察】
義歯作製による咀嚼機能の回復と訓練によって栄養状態と咀嚼嚥下機能の改善が認められ,介護者の食事介助時間の減少につながり負担を減らすことができた。その後約5年間口腔健康管理を続け誤嚥性肺炎を発症することなく2022年12月患者は老衰で亡くなられた。数日後,息子から介護負担の減少や最期まで経口摂取できたことに対し感謝の言葉をいただいた。訓練や食事の指導を行う際には患者のみならず介助者への負担という視点を持つことが重要である。振り返って十分ではなかった多職種や必要に応じた高次医療機関との連携は今後の課題である。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)