講演情報

[認定P-3]口腔機能の低下と低栄養を認めた患者に対し,口腔機能訓練と栄養指導を行った症例

○相田 亮平1、両角 祐子2,3 (1. 日本歯科大学新潟病院 訪問歯科口腔ケア科、2. 日本歯科大学新潟生命歯学部 歯周病学講座、3. 日本歯科大学新潟病院 総合診療科)
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【緒言・目的】
 高齢者にとって口腔機能の低下は,低栄養や身体的フレイルを引き起こし,健康寿命の短縮につながる。本症例は歯周病の継続管理中に,体重減少と口腔機能の低下を認め,患者に継続可能な口腔機能訓練の指導と併せて,管理栄養士と協働で栄養指導を行い,口腔機能の維持・向上と栄養状態の改善に取り組んだ。
【症例および経過】
 83歳,男性。心不全の既往あり。当院外来診療にて定期的な歯周病の継続管理中である。202X年Y月,最近食事量が減って痩せてきたとの訴えがあり,BMI 18.2であった。次に口腔機能精密検査を実施したところ,舌口唇運動機能低下,低舌圧,嚥下機能低下の3項目に該当し,口腔機能低下症と診断し, 舌の可動域訓練と舌回し体操を指導した。202X年Y+2月に心不全による2週間の入院後にBMIが16.2に低下したため,管理栄養士と協働し,患者家族が毎日記録している献立表をもとに,栄養指導を行った。その後BMIは202X年Y+9月に17.7に改善した。以後は3か月ごとの口腔機能訓練と6か月ごとの口腔機能検査を行い管理することとした。舌圧は初回検査時18.6kPa,202X年Y+22月には22.4kPaに改善した。しかし,202X年Y+35月 の再評価の際に,舌圧が20.3kPaと低下を認めた。舌の訓練が不定期に行われていたことが原因と考えられたことから,舌圧トレーニング器具(ペコぱんだ®)を紹介し,毎日の継続使用と使用方法を指導した。しかし,202X年Y+38月時点でも器具の使用が不定期であったことから,毎食前または後どちらかに行ってもらうよう再度指導し,献立表に訓練実施の記入も併せて行ってもらうよう指導した。以降は本人も器具の使用に慣れ,毎日継続できるようになった。その結果,202X年Y+41月の検査では,舌圧が21.9kPaと再び向上した。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
 口腔機能訓練の効果は,本人が口腔機能訓練を正しく継続的に実施できるかによって大きく左右される。本症例は,継続した口腔機能訓練のために毎食事の舌圧トレーニング器具の使用と,その実施内容を記録し,可視化させることで,患者の主体的な訓練の習慣づけと継続を行うことができた。また,栄養管理については,患者家族に対して管理栄養士と共に,献立表をもとにたんぱく質の増加や摂取カロリー増加に取組むことで低栄養を改善することができた。
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)