講演情報
[認定P-6]下顎歯肉癌の手術と再発を繰り返し,外来から在宅移行,看取りに至るまで9年にわたり多職種で関わった症例
○猪原 健1 (1. 医療法人社団敬崇会 猪原[食べる]総合歯科医療クリニック)
【緒言・目的】口腔がんの発症年齢は高齢化しており,罹患数の増加や治療後の生存期間延長に伴い,併存疾患を抱える高齢患者が在宅療養を行うケースが増加している。本発表では,左側下顎歯肉がんと診断され,その後放射線性骨壊死や再発を繰り返しながら,本人の生活の質を維持しつつ看取りに至るまでの9年間の経過を報告する。
【症例および経過】初診時年齢79歳女性。2009年1月,下顎義歯不適合を訴えて来院。義歯性潰瘍を認め,義歯使用を中止し2週間の経過観察を行ったが,不整な歯肉増殖を認めたため口腔外科へ紹介。左側下顎歯肉がんと診断され,下顎辺縁切除術,頸部郭清術,放射線療法50Gy,化学療法が実施された。術後5月に当院を再受診した際,放射線性骨壊死による腐骨や開口障害(開口量15mm)を認め,腐骨洗浄と開口訓練(28mmまで改善),口腔乾燥症への対応を継続した。2013年に口腔外科医の許可のもと補綴処置を行い,下顎義歯を装着。しかし,口腔乾燥が増悪し半年で使用を中止。2016年6月には夫の認知症進行に伴い,夫の歯科訪問診療を開始。同年10月に左舌への転移がんを認め再手術実施。術後,言語障害が強く言語聴覚士による言語訓練を開始した。2017年3月に下顎の再発が判明し手術困難となり,10月に在宅療養へ移行。医科主治医と管理栄養士の導入を支援し,口腔健康管理を継続した。2018年3月に緩和ケア病棟に入院。胃瘻造設後は入退院を繰り返したが,10月に在宅復帰。12月の看取りまで,経口摂取・コミュニケーション支援を多職種で行い,最期まで本人と家族を支援した。
【考察】本症例は,口腔がんの発見から看取りに至るまでの9年間,外来診療と訪問診療で対応したケースである。期間中,患者の口腔や全身の状態に応じて,口腔機能訓練,補綴処置,口腔乾燥への対応などを行いながら,患者の生活の質を維持することを目指した。また,患者本人が夫の介護と看取りを行う必要に迫られた際には,夫の訪問診療を通じた心理的支援を実施した。口腔がんの再発を繰り返す中で,患者本人が治療中止を決断する際の傾聴とサポートを行い,在宅療養への移行や在宅ケアチームの立ち上げを支援し,看取りに至るまで連携を十分に図り,継続的な支援を行うことができた。さらに,患者逝去後,家族が当院を受診し歯科診療を継続したことは,グリーフケアの一環としても機能したと考えられる。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)
【症例および経過】初診時年齢79歳女性。2009年1月,下顎義歯不適合を訴えて来院。義歯性潰瘍を認め,義歯使用を中止し2週間の経過観察を行ったが,不整な歯肉増殖を認めたため口腔外科へ紹介。左側下顎歯肉がんと診断され,下顎辺縁切除術,頸部郭清術,放射線療法50Gy,化学療法が実施された。術後5月に当院を再受診した際,放射線性骨壊死による腐骨や開口障害(開口量15mm)を認め,腐骨洗浄と開口訓練(28mmまで改善),口腔乾燥症への対応を継続した。2013年に口腔外科医の許可のもと補綴処置を行い,下顎義歯を装着。しかし,口腔乾燥が増悪し半年で使用を中止。2016年6月には夫の認知症進行に伴い,夫の歯科訪問診療を開始。同年10月に左舌への転移がんを認め再手術実施。術後,言語障害が強く言語聴覚士による言語訓練を開始した。2017年3月に下顎の再発が判明し手術困難となり,10月に在宅療養へ移行。医科主治医と管理栄養士の導入を支援し,口腔健康管理を継続した。2018年3月に緩和ケア病棟に入院。胃瘻造設後は入退院を繰り返したが,10月に在宅復帰。12月の看取りまで,経口摂取・コミュニケーション支援を多職種で行い,最期まで本人と家族を支援した。
【考察】本症例は,口腔がんの発見から看取りに至るまでの9年間,外来診療と訪問診療で対応したケースである。期間中,患者の口腔や全身の状態に応じて,口腔機能訓練,補綴処置,口腔乾燥への対応などを行いながら,患者の生活の質を維持することを目指した。また,患者本人が夫の介護と看取りを行う必要に迫られた際には,夫の訪問診療を通じた心理的支援を実施した。口腔がんの再発を繰り返す中で,患者本人が治療中止を決断する際の傾聴とサポートを行い,在宅療養への移行や在宅ケアチームの立ち上げを支援し,看取りに至るまで連携を十分に図り,継続的な支援を行うことができた。さらに,患者逝去後,家族が当院を受診し歯科診療を継続したことは,グリーフケアの一環としても機能したと考えられる。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)