講演情報
[認定P-7]骨髄異形成症候群の高齢患者に生じた薬剤関連顎骨壊死に対し外科的療法を施行し、その後長期経過観察ならびに口腔管理を行った1例
○福辻 智1,2、小向井 英記2 (1. ふくつじ歯科医院、2. 小向井歯科クリニック)
【緒言・目的】骨髄異形成症候群(以下MDS)の高齢患者に生じた薬剤関連顎骨壊死に対し外科的療法を施行し、長期口腔管理をおこなった1例を報告する。
【症例および経過】79歳、女性。MDS、骨粗鬆症の既往あり。2年前からビスフォスフォネート(以下BP)製剤を内服。右側下顎大臼歯部の持続的疼痛を主訴に来院。右側オトガイ部の知覚低下、右側下顎大臼歯部歯肉に腫脹と排膿を認めた。パノラマX線写真で、右側下顎第一大臼歯歯根周囲に腐骨の分離像および周囲の骨硬化像を認めた。臨床診断は右側下顎薬剤関連顎骨壊死(Stage2)。5か月間のBP製剤休薬後、術前に顆粒球コロニー形成刺激因子(G-CSF)の投与を行い、WBC を990/µlから 3600/µl、好中球を450/µlから2700/µlまで上昇させ、腐骨除去術および周囲骨掻把術を施行。術後6か月の経過は良好であった。担当医の開業医院で、口腔管理を継続。術後経過は良好で、下顎義歯を作製した。口腔管理を継続していたが、高齢で口腔衛生状態が不良になりやすく、歯周疾患が進行し、右上第二大臼歯・第一小臼歯の動揺はM3となり抜歯に至った。WBC 1440/μlであったが低侵襲抜歯であったので、術前抗菌薬内服後、抜歯した。術後経過は良好で、粘膜治癒後に上顎義歯を作製した。その後左側下顎第二大臼歯は自然脱落したが、顎骨壊死はなく経過は良好であった。続いて左下第一大臼歯の動揺がM3となり。WBC1772/μlにつき、術前抗菌薬内服後、抜歯した。術後経過良好に思われたが、約1年後に左側オトガイ部皮膚に知覚鈍麻を認め、左側第一大臼歯部歯肉に瘻孔をみとめた。瘻孔深部に骨様硬を認め、CBCTにて顎骨壊死を疑う所見を認め、近口腔外科紹介に至るも、腐骨が自然排出され治癒した。粘膜治癒後に下顎義歯作製を行った。定期口腔管理を継続し、口腔内状態は安定している。
【考察】MDSによる易感染状態かつ口腔衛生状態が不良な状態でBP製剤が投与されており、薬剤関連顎骨壊死に至ったと考えられた。汎血球減少も認め、術後感染や止血困難への対策が必要と考えられた。本症例では高侵襲の右下顎顎骨壊死の外科的療法では術前後の抗菌薬投与やG-CSF投与、血小板輸血も行うことで術後感染や術後出血を認めることなく良好な結果を得られた。術後の長期の口腔衛生管理で顎骨壊死を予防できたと思われていたが、汎血球減少や過去のBP製剤投与により抜歯後の顎骨壊死を起こしてしまった。口腔外科医との連携を密にしながらの対応が重要である。
(COI開示:なし)
(患者同意:あり)
【症例および経過】79歳、女性。MDS、骨粗鬆症の既往あり。2年前からビスフォスフォネート(以下BP)製剤を内服。右側下顎大臼歯部の持続的疼痛を主訴に来院。右側オトガイ部の知覚低下、右側下顎大臼歯部歯肉に腫脹と排膿を認めた。パノラマX線写真で、右側下顎第一大臼歯歯根周囲に腐骨の分離像および周囲の骨硬化像を認めた。臨床診断は右側下顎薬剤関連顎骨壊死(Stage2)。5か月間のBP製剤休薬後、術前に顆粒球コロニー形成刺激因子(G-CSF)の投与を行い、WBC を990/µlから 3600/µl、好中球を450/µlから2700/µlまで上昇させ、腐骨除去術および周囲骨掻把術を施行。術後6か月の経過は良好であった。担当医の開業医院で、口腔管理を継続。術後経過は良好で、下顎義歯を作製した。口腔管理を継続していたが、高齢で口腔衛生状態が不良になりやすく、歯周疾患が進行し、右上第二大臼歯・第一小臼歯の動揺はM3となり抜歯に至った。WBC 1440/μlであったが低侵襲抜歯であったので、術前抗菌薬内服後、抜歯した。術後経過は良好で、粘膜治癒後に上顎義歯を作製した。その後左側下顎第二大臼歯は自然脱落したが、顎骨壊死はなく経過は良好であった。続いて左下第一大臼歯の動揺がM3となり。WBC1772/μlにつき、術前抗菌薬内服後、抜歯した。術後経過良好に思われたが、約1年後に左側オトガイ部皮膚に知覚鈍麻を認め、左側第一大臼歯部歯肉に瘻孔をみとめた。瘻孔深部に骨様硬を認め、CBCTにて顎骨壊死を疑う所見を認め、近口腔外科紹介に至るも、腐骨が自然排出され治癒した。粘膜治癒後に下顎義歯作製を行った。定期口腔管理を継続し、口腔内状態は安定している。
【考察】MDSによる易感染状態かつ口腔衛生状態が不良な状態でBP製剤が投与されており、薬剤関連顎骨壊死に至ったと考えられた。汎血球減少も認め、術後感染や止血困難への対策が必要と考えられた。本症例では高侵襲の右下顎顎骨壊死の外科的療法では術前後の抗菌薬投与やG-CSF投与、血小板輸血も行うことで術後感染や術後出血を認めることなく良好な結果を得られた。術後の長期の口腔衛生管理で顎骨壊死を予防できたと思われていたが、汎血球減少や過去のBP製剤投与により抜歯後の顎骨壊死を起こしてしまった。口腔外科医との連携を密にしながらの対応が重要である。
(COI開示:なし)
(患者同意:あり)