講演情報

[認定P-13]舌接触補助床が食塊の咽頭通過を改善させた延髄外側梗塞の1例

○黒田 茉奈1、吉田 光由1 (1. 藤田医科大学医学部歯科・口腔外科学講座)
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【緒言・目的】
 舌接触補助床(PAP)は,主に頭頸部腫瘍術後や脳血管疾患等を原因とする舌の運動障害の改善を目的として使用されているが,嚥下時の咽頭圧形成にも寄与することが言われている。今回,咽頭期嚥下障 害に対してPAP装着が有効であった一例を報告する。
【症例および経過】
 67歳男性,右延髄外側梗塞を発症し入院した。入院時より気管切開術が施行され,経管栄養管理となっていた。15病日より間接訓練を開始,26 病日に行った初回の嚥下造影検査(VF)で喉頭挙上不全と咽頭 収縮不全,食道入口部開大不全を認め,間接訓練としてバルーン拡張法,メンデルソン手技,頭部挙上訓練を実施した。42病日から直接訓練を開始,60病日のVFで咽頭クリアランス不良が残存しており,咽頭圧改善に向けてPAPを作成する方針となった。PAP完成後に実施した 71病日のVFで,PAP装着により食道入口部の食塊通過量の増加が認められ,同時に施行した高解像度マノメトリー検査では中咽頭圧積分値が1mmHg•cm•secから23mmHg•cm•secへと上昇していた。その後PAP装着による直接訓練を継続,153病日には3食経口摂取が可能となり,163病日には軟飯,咀嚼調整食まで食形態が改善した。176病日のVFでPAPを装着しなくても送り込みが良好で咽頭残留もなかったためPAPを離脱した。
【考察】
 咽頭期の通過障害を主とする病態であっても,PAPが有効な治療法となる可能性が示された。本症例では,PAPの装着により口蓋と舌の接触を維持することで舌骨上筋群の筋力向上ができ,その結果,舌骨 の前上方への移動量と挙上時間が改善し,食道入口部の開大改善に繋がったのではないかと考えた。
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)