講演情報
[認定P-14]放射線治療後の嚥下障害に摂食嚥下リハビリテーションが有効であった一例
宮城 航1,2、○菊谷 武1,2 (1. 日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック、2. 日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科)
【緒言・目的】
頭頸部癌に対する標準治療として化学放射線療法が広く普及し,それに伴い治療による後遺症に関する理解も進んでいる。治療後の晩期有害事象は摂食嚥下機能に影響を及ぼし,QOLを低下させる。今回,中咽頭癌に対し化学放射線療法後の嚥下障害に摂食嚥下リハビリテーションを実施し有効であった症例を経験したので報告する。
【症例および経過】
73歳,男性。食道癌,中咽頭癌の既往あり。令和2年10月に中咽頭癌にて入院し,化学放射線治療を実施した。その後、飲み込みにくさとむせを感じ,令和3年7月に嚥下機能検査を希望し当クリニック外来受診した。嚥下機能評価によりHyodo komagane scoreは4点であった。また舌骨移動量と喉頭挙上量不良,喉頭蓋反転不良,食道入口部開大不全,咽頭収縮不良,嚥下反射遅延が観察されたため嚥下おでこ体操とメンデルソン手技を指導した。またBMIも16.9kg/m²と低値であったため管理栄養士が介入し補食の提案を行った。その後,口腔衛生管理と歯周炎による保存困難歯の抜歯,咬合支持回復のための義歯製作等と並行して間接訓練を継続し,口腔衛生状態の改善,BOPと4mm以上の歯周ポケットを有する歯の減少,咀嚼能力は144mg/dlから173mg/dl,BMIは17.5kg/m²と増加した。食物の咽頭残留は以前と比較すると改善していたが,嚥下機能の改善に至らず,本人の嚥下困難感も続いていたため,水分との交互嚥下と嚥下の意識化を指導した。その結果,患者の嚥下困難感やむせが以前に比べ改善した。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
本症例は化学放射線療法により放射線照射域に含まれていた舌骨上筋群の線維化や萎縮が起こったために間接訓練を行っても明らかな嚥下機能の改善に至らなかったと考える。そのためHyodo komagane scoreも初診時以降変化はなかった。しかし水分との交互嚥下と嚥下の意識化を習得したことで初診時のEAT-10が14点から8点に改善したことからこれらが有効であったと考える。継続した摂食嚥下リハビリテーションがQOLの向上に寄与したと考える。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)
頭頸部癌に対する標準治療として化学放射線療法が広く普及し,それに伴い治療による後遺症に関する理解も進んでいる。治療後の晩期有害事象は摂食嚥下機能に影響を及ぼし,QOLを低下させる。今回,中咽頭癌に対し化学放射線療法後の嚥下障害に摂食嚥下リハビリテーションを実施し有効であった症例を経験したので報告する。
【症例および経過】
73歳,男性。食道癌,中咽頭癌の既往あり。令和2年10月に中咽頭癌にて入院し,化学放射線治療を実施した。その後、飲み込みにくさとむせを感じ,令和3年7月に嚥下機能検査を希望し当クリニック外来受診した。嚥下機能評価によりHyodo komagane scoreは4点であった。また舌骨移動量と喉頭挙上量不良,喉頭蓋反転不良,食道入口部開大不全,咽頭収縮不良,嚥下反射遅延が観察されたため嚥下おでこ体操とメンデルソン手技を指導した。またBMIも16.9kg/m²と低値であったため管理栄養士が介入し補食の提案を行った。その後,口腔衛生管理と歯周炎による保存困難歯の抜歯,咬合支持回復のための義歯製作等と並行して間接訓練を継続し,口腔衛生状態の改善,BOPと4mm以上の歯周ポケットを有する歯の減少,咀嚼能力は144mg/dlから173mg/dl,BMIは17.5kg/m²と増加した。食物の咽頭残留は以前と比較すると改善していたが,嚥下機能の改善に至らず,本人の嚥下困難感も続いていたため,水分との交互嚥下と嚥下の意識化を指導した。その結果,患者の嚥下困難感やむせが以前に比べ改善した。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
本症例は化学放射線療法により放射線照射域に含まれていた舌骨上筋群の線維化や萎縮が起こったために間接訓練を行っても明らかな嚥下機能の改善に至らなかったと考える。そのためHyodo komagane scoreも初診時以降変化はなかった。しかし水分との交互嚥下と嚥下の意識化を習得したことで初診時のEAT-10が14点から8点に改善したことからこれらが有効であったと考える。継続した摂食嚥下リハビリテーションがQOLの向上に寄与したと考える。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)