講演情報
[認定P-16]口腔がん術後から長期経過した患者の摂食嚥下機能低下に対してPAPや間接訓練とONSの活用が有効であった症例
○多田 瑛1、谷口 裕重1 (1. 朝日大学摂食嚥下リハビリテーション学分野)
【緒言・目的】
口腔がん術後の摂食嚥下障害は部位や範囲・手術方法によってその症状は異なるが,術後に口腔機能の低下や準備期から口腔期の問題が生じることは少なくない。今回,術後から16年経過し,摂食嚥下機能の低下を認めた高齢者に対してPAP作成や間接訓練,栄養補助食品(ONS)の活用により摂食嚥下機能が向上した1 例を経験したので報告する。
【症例および経過】
88 歳,女性。骨粗鬆症の既往あり。2007年に左頬粘膜癌にて化学療法,再建術を他院にて施行された。2019年より当院口腔外科にてフォローされており,2023年3月に唾液や食事を飲み込むのに時間がかかることを主訴に当科へ紹介があった。初診時の口腔内は上下顎ともに左側第一小臼歯から後方は欠損している状態であった。口腔機能精密検査を行い,7項目中4項目該当(口腔乾燥24.2,舌口唇運動機能/pa/3.2回 /ta/3.0回/ka/3.6回,舌圧11.2kPa,EAT-10:27点)で口腔機能低下症と診断し,同日より舌抵抗訓練を行った。また,1年で5kg体重減少を認めたためONSの活用を開始した。2週間後に来院時VFを行い,液体4mlで早期咽頭流入による喉頭侵入や,麻痺側に食塊が流れることで送り込みに時間を要していたため,頸部屈曲位の指導とPAPの作製を開始し,完成時は舌圧15.9kPaであったが,定期的にVFによる評価や舌訓練等を中心とした間接訓練を継続した。初診時から約6ヶ月の段階ではPAP装着下で舌圧23.5kPaまで改善した。また,ONSも継続しており,摂食嚥下機能の向上および食事時間の短縮につながり,現在も体重減少なく経過している。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
本症例は口腔がん術後による器質的原因と口腔機能低下による機能的原因により,口唇からの漏出や口腔内保持不良による早期咽頭流入を認めた。口腔機能精密評価や嚥下機能評価などの客観的評価を行い,検査結果を基にPAPや頸部屈曲などの代償法,舌訓練などの摂食嚥下リハビリテーションに加えて,栄養面の評価をあわせて行いONSの活用を継続したことにより体重減少を阻止し,摂食嚥下機能の向上および主訴である食事時間の短縮に繋がったものと考えられる。(COI開示:なし)
口腔がん術後の摂食嚥下障害は部位や範囲・手術方法によってその症状は異なるが,術後に口腔機能の低下や準備期から口腔期の問題が生じることは少なくない。今回,術後から16年経過し,摂食嚥下機能の低下を認めた高齢者に対してPAP作成や間接訓練,栄養補助食品(ONS)の活用により摂食嚥下機能が向上した1 例を経験したので報告する。
【症例および経過】
88 歳,女性。骨粗鬆症の既往あり。2007年に左頬粘膜癌にて化学療法,再建術を他院にて施行された。2019年より当院口腔外科にてフォローされており,2023年3月に唾液や食事を飲み込むのに時間がかかることを主訴に当科へ紹介があった。初診時の口腔内は上下顎ともに左側第一小臼歯から後方は欠損している状態であった。口腔機能精密検査を行い,7項目中4項目該当(口腔乾燥24.2,舌口唇運動機能/pa/3.2回 /ta/3.0回/ka/3.6回,舌圧11.2kPa,EAT-10:27点)で口腔機能低下症と診断し,同日より舌抵抗訓練を行った。また,1年で5kg体重減少を認めたためONSの活用を開始した。2週間後に来院時VFを行い,液体4mlで早期咽頭流入による喉頭侵入や,麻痺側に食塊が流れることで送り込みに時間を要していたため,頸部屈曲位の指導とPAPの作製を開始し,完成時は舌圧15.9kPaであったが,定期的にVFによる評価や舌訓練等を中心とした間接訓練を継続した。初診時から約6ヶ月の段階ではPAP装着下で舌圧23.5kPaまで改善した。また,ONSも継続しており,摂食嚥下機能の向上および食事時間の短縮につながり,現在も体重減少なく経過している。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
本症例は口腔がん術後による器質的原因と口腔機能低下による機能的原因により,口唇からの漏出や口腔内保持不良による早期咽頭流入を認めた。口腔機能精密評価や嚥下機能評価などの客観的評価を行い,検査結果を基にPAPや頸部屈曲などの代償法,舌訓練などの摂食嚥下リハビリテーションに加えて,栄養面の評価をあわせて行いONSの活用を継続したことにより体重減少を阻止し,摂食嚥下機能の向上および主訴である食事時間の短縮に繋がったものと考えられる。(COI開示:なし)