講演情報

[認定P-18]CVポート破損を契機に経口摂取を再検討した重度嚥下障害の症例

○島田 星羅1、櫻井 薫1 (1. こばやし歯科クリニック)
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【緒言・目的】
 高齢者の重度嚥下障害では経口摂取を禁止とする場合が多く,QOL(生活の質)の低下が問題となる。本症例はCVポートの破損をきっかけに再度VEを実施し,口腔機能訓練を組み合わせることで経口摂取再開を試みた一例である。
【症例および経過】
 患者は重度の嚥下障害により経口摂取禁止の方針で管理されていたが,令和6年9月24日にCVポートが破損し抜去に至ったことを契機に,ご家族からの強い要望を受けて初回VEを実施した。その結果,嚥下反射は起こらず経口摂取は困難と判断。以降,シャキアエクササイズ,アイスマッサージ,舌挙上訓練などを継続的に行い,再評価VEではペースト食を用いた検査で咽頭残留は認めたものの誤嚥はなく,ペースト食での経口摂取を開始した。経口摂取導入後は体重が約2 kg増加し,ご家族の満足度も高い状況で経過観察中である。
【考察】
 重度嚥下障害に対しても複数回のVE評価と適切なリハビリテーションを行うことで,経口摂取再開の可能性を検討できる。本症例はCVポート破損という突発的な事象が契機となったが,基礎的な口腔機能訓練を通じて安全性を確認し,経口摂取への移行に成功した。今後は誤嚥リスクを最小限に抑えつつ,定期的に嚥下機能を評価することでQOLのさらなる向上をめざすことが重要と考える。
(COI:なし)
本症例の発表に際して倫理審査は不要と判断し、患者およびご家族から同意を得ている。