講演情報

[認定P-19]脳梗塞後の嚥下障害に対し,継続して摂食嚥下リハビリテーションを行った症例

○中尾 幸恵1、谷口 裕重2 (1. 医療法人社団登豊会 近石病院 歯科・口腔外科、2. 朝日大学歯学部 摂食嚥下リハビリテーション学分野)
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【緒言・目的】
 脳血管障害による嚥下障害に対し,発症後早期より摂食嚥下リハビリテーションを行うことは重要である。今回,脳梗塞発症後早期から摂食嚥下リハビリテーションを行い,3食経口摂取可能となった1例を経験したので報告する。
【症例および経過】
 93歳,男性。X年4月6日に右中大脳動脈梗塞にて入院となり,入院2日後に嚥下機能評価目的に歯科に紹介となった。口腔内は乾燥を認め,残存歯は2本で上下部分床義歯を所持していたが3年ほど使用しておらず義歯不適合を認めた。脳梗塞の影響で左上下肢麻痺と左半側空間無視を認めた。初診時にVE,VFを実施したところ,咽頭内の痰貯留,薄いとろみで誤嚥を認めた。ミキサー食は一口量が少量であれば咽頭残留は少なく,誤嚥は認めなかった。以上の結果より,ミキサー食から経口摂取可能と考えられ,液体は中間とろみで摂取してもらうこととした。歩行訓練などの全身的なリハビリテーションや口腔衛生管理,ミールラウンドを継続的に行いながらADLの向上や誤嚥性肺炎の予防,食事摂取状況に応じて食事形態の調整を行い,自宅または施設へ退院することを目標とした。初診から約1か月半後に再度VE,VFを実施したところ,薄いとろみでの誤嚥は認めず,ムース食(嚥下調整食コード2-2)の咽頭残留や誤嚥は認めなかったためムース食の摂取可能と判断し食事形態を変更した。その後ソフト食(嚥下調整食3)へ食事形態を変更したが,本人が食べづらさを訴えたためムース食へ再度変更した。また,本人や家族から義歯新製の希望があったため上顎義歯は新製を行い,下顎義歯は修理と調整を行った。初診から約2か月後に施設へ退院となり,退院後に嚥下評価と義歯調整のため歯科訪問診療にて介入を行った。退院後のVEでの評価上は退院前と比較して嚥下機能の低下はみられなかった。なお,本報告の発表について患者本人および家族から文書による同意を得ている。
【考察】
 脳血管障害によってADLや嚥下機能が低下していくリスクがあると考えられる。そのため,発症後早期からリハビリテーションを行い,機能を維持することが重要である。本症例では入院後早期から摂食嚥下リハビリテーションを行うことで3食経口摂取可能となり,全身状態や嚥下機能に応じて食事形態の調整を行ったことで嚥下機能の維持に寄与できたと考えられた。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)