講演情報

[認定P-20]パーキンソン病の摂食嚥下障害に対し多職種と連携を行った症例

○佐藤 志穂1、齋藤 貴之1 (1. 医療法人社団淼ごはんがたべたい歯科クリニック)
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【緒言】
 摂食嚥下障害はパーキンソン病患者の半数以上に存在し,QOLを大きく低下させる要因となっている。今回,パーキンソン病の摂食嚥下障害患者に対して食事指導の内容を多職種と共有し食支援を行った症例を経験したので報告する。
【症例および経過】
 82歳,男性。上の前歯が欠けたとの主訴で訪問主治医より当院を紹介された。既往歴はパーキンソン病(Yahr4,診断は初診-3年),前立腺癌,高血圧,鉄欠乏性貧血があった。生活様式は独居で,デイサービスやショートステイ,ヘルパー,訪問看護を利用しながら自立していた。食事は常食を自食していた。口腔内は衛生状態不良で齲蝕が多発している状態だった。まずは定期的な口腔衛生管理と齲蝕処置を行い,主訴の改善を図った。一旦症状は落ち着いたが,パーキンソン病の進行で,転倒による入退院を繰り返し投薬量の増加も必要となり,歯科でも,歯冠破折を繰り返し上下義歯不適合による咀嚼障害の訴えがでてきた。そのため,上下部分義歯を作製し咬合の回復を図った。歯科治療により咀嚼は改善したものの,一方で自宅やデイサービスで食事が喉に引っかかって食事の中断が起こり,窒息には至らなかったものの,在宅医科診療所への緊急相談が増えるなど,食事の問題が喫緊の課題となってきた。そこで歯科介入時,嚥下機能評価を行った。食事観察とVEの結果,咀嚼と食塊形成はできており,詰め込みが原因と考えられた。そのため食事形態は固いものへの注意は必要なものの形態変更の指示はせず,一口量とペースに気を付けていくことを多職種と共有した。現在は多職種で見守りや食事の際の声掛けにより,嚥下困難感は解消され,良好な経過をたどっている。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
 本症例では,患者と支援する多職種が摂食嚥下評価の結果を共有し,患者の状態にあった安全な食事環境の条件設定を行なうことができた。パーキンソン病は進行性の疾患であり,摂食嚥下機能が低下していくことが予想され,誤嚥や窒息のリスクを軽減していく指導が必要になる。当該患者は独居であるため,今後も介護状況にも視点を向け安全な支援方法を検討しながら多職種と関わることが大切であると考えられる。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)