講演情報

[認定P-21]中咽頭癌術後に歯科訪問診療にて摂食嚥下リハビリテーションが著効し、生活の質が向上した症例

○亀田 千津子1、戸原 玄1 (1. 東京科学大学摂食嚥下リハビリテーション学分野)
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【緒言・目的】
 頭頸部癌治療において,治療後に嚥下障害が遷延,あるいは晩期の有害事象としての嚥下障害を生じ,著しいQuality of Life(QOL)の低下を来すことがしばしば経験される。今回,中咽頭癌術後に歯科訪問診療にて摂食嚥下リハビリテーションが著効し,生活の質が向上した 1 例を経験したので報告する。

【症例および経過】
 82歳,男性。2022年,中咽頭癌により内視鏡下において経口的に中咽頭腫瘍,下咽頭表在病変の切除後,ADLの低下と相まって経口摂取困難となり,胃瘻造設された。2023年初診時は, 摂食嚥下リハビリテーションは行っておらず,ゼリーを少量経口摂取する程度であった。左側腰椎圧迫骨折の為,ベッドで長時間座位が保てない状況であった。初診時にゼリーを摂取し, 嚥下内視鏡検査(VE)にて,嚥下機能評価を行ったところ,咀嚼動作は良好であるが,嚥下反射惹起遅延, 喉頭侵入,誤嚥所見が認められた。直接訓練として,2%とろみ水から経口摂取を開始するよう指導し,開口訓練を指導した。初診から3か月間はゼリーや2%とろみ水にて直接訓練を実施し,4か月目にペースト食を摂取し,VEを行ったところ,咽頭内残留,誤嚥を認めず,嚥下機能の改善が見られた。その後,デイサービスに通うようになり,身体活動量が増えた事や言語聴覚士(以下ST)の介入により,飲水量および食事量が増加した。初診時に2%とろみ水だった食形態は,常食をお楽しみ程度に摂取できるところまで回復した。現在までに誤嚥性肺炎の発症や有害イベントが生じることなく経過している。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。

【考察】
 中咽頭癌術後は経口摂取困難だったが,VEにて評価を行い摂取可能な食形態を適切に検討しながら摂食嚥下リハビリテーションを行ったことにより,食事を再開できたと考える。加えて,デイサービスの利用で身体活動量が増加した事やSTの介入により摂食嚥下リハビリテーションを定期的に行っている他,地域のお祭りにも積極的に参加し,他者との関わりの機会も増加したため,生活の質も改善されたと考察する。

(COI開示:なし)(倫理審査対象外)