講演情報

[認定P-28]異常絞扼反射に対し,歯科治療と口腔機能管理,栄養指導を実施することで体組成の改善を認めた高齢者の一例

○角野 夢子1、藤井 航2 (1. 医療法人角野歯科医院いまづ歯科、2. 九州歯科大学口腔保健学科多職種連携推進ユニット)
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【緒言・目的】 
 高齢者では様々な全身疾患へ配慮した歯科治療が必要となることが多く,とくに異常絞扼反射(gagging reflex: GR)を有する患者では治療中断や,義歯不使用を余儀なくされることをしばしば認める.今回,全身疾患やGRに留意した歯科治療を行うことで口腔機能,体組成の改善を認めた高齢者の一例を経験したので報告する.
【症例及び経過】 
 82歳,男性.歯肉腫脹を主訴に来院した.不整脈,糖尿病の既往あり.GRのため義歯不使用であった.右上第一小臼歯は歯肉腫脹,重度骨吸収のため抜歯適応であった.主治医に診療情報提供を依頼し,抜歯はモニタリング下にて実施した.GR重症度はGagging Severity Index:GradeⅢであり,左上大臼歯部のう蝕治療時は心理面や姿勢,治療時間に留意した.抜歯窩治癒後にGRに留意して義歯を製作したが,装着後に治療中断となった.5年後,上顎前歯を破折して来院した.GRのため義歯は使用不可であった.義歯使用の必要性や口腔機能検査の結果について十分に説明し,GRに配慮した残存歯治療と義歯製作を実施した.義歯装着後は,定期的に義歯使用状況の確認,口腔機能管理, DVS(食品の多様性スコア)を用いた栄養指導,体組成測定を実施した.義歯製作前と1年後において,口腔機能は咬合力:206→539N,ODK/pa/:4.8→6.0回/秒,/ta/:4.4→5.2回/秒,/ka/:4.2→5.0回/秒,舌圧:11.8→13.4kPa,咀嚼機能検査:92→173mg/dL,体組成は体重:54.2→55.1kg,BMI:21.1→21.4,筋肉量:38.7→40kg,体脂肪率:24.5→23.3%,DVS:5→8と改善を認めた.なお,本報告の発表に関して患者本人から文書による同意を得ている.
【考察】 
 本症例では,全身疾患とGRに対して留意して歯科診療を行った.長期間使用不可であった義歯も,初回の教訓を生かし2回目の製作時には形態に配慮し,義歯の必要性や口腔機能検査の結果などを十分に説明することで,継続して義歯が使用できるように努めた.その結果,義歯使用が可能となり,口腔機能,体組成やDVSも改善を認めたと考えられた.
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)