講演情報

[摂食審査P-01]誤嚥性肺炎を短期間で複数回繰り返している症例

○岡澤 仁志1 (1. 明海大学歯学部)
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【緒言・目的】
 誤嚥性肺炎が改善したものの栄養状態が改善しないまま退院となり,嚥下機能・免疫力の低下した状態により誤嚥性肺炎で短期再入院となる症例が散見される。本症例は食形態の調整や間接的訓練により肺炎発症を予防した症例について報告する。
【症例および経過】
 患者は87歳男性,2年前に脳血管疾患の既往があり、咳嗽が見られた。初診5か月前に39度を超える発熱および呼吸困難のため急性期病院へ搬送され誤嚥性肺炎と診断され,入院中は禁食となった。2週間後に肺炎が改善し在宅への退院となったがその後5か月の間に2回肺炎を繰り返し,3度目の誤嚥性肺炎から退院後は介護老人保健施設入所した。2か月後に在宅へ復帰した際、ケアマネジャー経由で家族より摂食機能評価を依頼された。BMI17.6㎏/m²,頸部聴診:湿性音を聴診,咳テスト:反射による喀出力は弱いが指示による喀出力は強い。TCI:10/18(55%),舌圧22.7kPa,咀嚼能率検査:137mg/dlであった。嚥下内視鏡検査の結果,安静時に梨状窩に少量の唾液貯留を認めるものの喉頭侵入は認めなかった。White outは不明瞭であり,左側声帯麻痺が見られた。水分・きざみ食ともに嚥下反射惹起遅延を認めた。食塊は喉頭蓋谷に中等度量残留し,喉頭蓋内面へのわずかな侵入が確認できたが,あきらかな誤嚥は見られなかった。水分を交互嚥下することにより残留物および喉頭蓋内面の付着物は除去されていた。以上結果から脳梗塞後遺症および廃用症候群による摂食嚥下障害と考え、一口量の調整や交互嚥下を指示,嚥下調整食2-1から段階的に調整(最終的にひと口大),高カロリー食を用いた栄養管理,口腔ケア指導を行った。咽頭収縮力や咽頭圧向上のため舌骨上筋群の筋力向上目的にシャキア訓練,ペコパンダ®を用いた舌レジスタンス訓練を行った。3年の経過で,口腔機能は改善し,TCI:5/18(27%),咀嚼能率検査:152mg/dl,舌圧:29.7Kpa, white outは明瞭化し食物の咽頭残留も改善した。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
 本症例で過去の脳梗塞の影響や加齢による廃用が重なり肺炎を繰り返した可能性が高く,適切な口腔機能訓練、摂食機能評価や指導,口腔管理もあり間質性肺炎を挟んで2年間誤嚥性肺炎を予防できた。何かしらの疾患で長期入院から退院した際、認知機能や筋力の低下が低下している可能性が高いため、適切な嚥下機能の再評価,食形態の調整や訓練,口腔ケアの見直しは重要である。
COI開示:なし
倫理審査対象外