講演情報

[EP4-4]市中病院における看護師立脚型の院内歯科チーム依頼システムの導入と実績

○尾﨑 研一郎1,2、寺中 智1,3、河合 陽介1,3、堀越 悦代1、戸原 玄2 (1. 足利赤十字病院 リハビリテーション科、2. 東京科学大学 大学院 医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野、3. 東京科学大学 大学院 医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野)
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【目的】
 入院患者における口腔問題は国内外で多くの報告があるが、その口腔問題に対して歯科が早期介入まで踏み込んだ報告は限られている。本邦では保険導入された周術期等口腔機能管理により予防的な口腔管理が充実してきたが、歯科職種が病棟看護師の口腔ケアのニードに対してタイムリーに対応をできているかは明らかではない。当院では、医師内諾のもと看護師からの院内歯科チーム依頼システムを構築している。今回、院内歯科チーム依頼の実態について調査したので報告する。
【方法】
 対象は、2019年4月から2022年3月までに院内歯科チーム依頼があった1,159人とした。当院医事課が管理するThe Japanese Diagnosis Procedure Combinationデータ、歯科レセプトデータ、歯科チーム依頼データを用いて調査を行った。調査項目は、性別、年齢、主科、入院経路、入院の契機となった病名(International Classification of Diseases Version 10)、在院日数、Body Mass Index、院内歯科チームへの依頼内容、入院から院内歯科チーム依頼までの日数、院内歯科チーム介入の形態、歯科診療回数などについて調査した。
【結果と考察】
 対象は、男性 676人(58.3%)、女性 483人(41.7%)、年齢は中央値 79歳(IQR 71-85)であった。主科は、内科 626人(54.0%)、循環器科 95人(8.2%)、脳神経外科 90人(7.7%)と続いた。入院経路は自宅 1,015人(87.6%)、介護施設や福祉施設 98人(8.5%)、転院 46人(4.0%)であった。入院の契機となった病名は、循環器系の疾患(主に心疾患、脳血管疾患)319人(27.5%)、腫瘍 184人(15.9%)、呼吸器系の疾患 182人(15.7%)と続いた。在院日数は中央値 30日(IQR 17-56)、Body Mass Indexは中央値 21.2 kg/m2(IQR 18.6-23.8)であった。院内歯科チームへの依頼内容(重複あり)は口腔内汚染 734人(41.0%)、口腔内乾燥 412人(23.0%)、義歯不適合 183人(10.2%)、動揺歯 128人(7.2%)、口腔内出血 115人(6.4%)、疼痛 93人(5.2%)、口腔粘膜炎 54人(3.0%)と続いた。入院から院内歯科チーム依頼までの日数は中央値 6日(IQR 3-14)、院内歯科チーム介入の形態として、「無償での診察と看護師指導もしくは有事診察」は380人(32.8%)、「有償での歯科診療」は779人(67.2%)、有償での歯科診療回数は中央値 3回(IQR 2-5)であった。歯科チームへの依頼内容は口腔内汚染が約4割と最も多かったが、歯科医師の介入が必要となる義歯不適合や動揺歯や口腔内出血などを合わせる35%となった。つまり歯科医師と歯科衛生士はOne Teamとして周術期等の加算とは別に、看護師のニーズにタイムリーに対応できるシステム構築が望まれる。(COI 開示:なし)(足利赤十字病院 倫理委員会 倫理番号 2020-12)